2022/11/05
慢性早剥羊水過少症候群(CAOS) chronic abruption-oligohydramnios sequence; CAOS
四国がんセンターにおけるCAOSの6例 31.pdf (tyuushi-obgyn.jp) 参考
「慢性早剥羊水過少症候群(CAOS)」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)
CAOSとは
(1)分娩7日以上前から持続する原因不明の性器出血
(2)当初は羊水量が正常
(3)破水の所見なく羊水過少に至る
この3項目を満たすものと定義されます。
早産の原因となったり、出生後の慢性肺疾患、肺低形成、dry lungに関連するために、周産期予後を増悪させます。
原因は不明で、診断は容易ではなく、治療も確立されたものはありません。
病態
・慢性の常位胎盤早期剥離に羊水過少を合併したものとされます。
・慢性の常位胎盤早期剥離では、母体静脈圧上昇により静脈還流が阻害され、胎盤辺縁下の静脈破綻を起こし出血し、その血液により脱落膜と絨毛膜が剥離し血腫形成や性器出血をきたします。
・動脈性出血による急性の胎盤早期剥離とは異なり、緩徐に進行し、血腫形成によって羊膜絨毛膜への血液供給が減少し胎盤機能不全や胎児腎機能悪化などによって羊水過少が引き起こされると推測されています。
・絨毛膜下血腫はCAOS症例の75%に合併するとされ、また絨毛膜下血腫が長期化し慢性早剥となる症例が存在することも報告されており、絨毛膜下血腫合併症例ではCAOS発症の可能性に注意する必要があると考えられます。
・CAOSの羊水過少の原因として胎盤機能不全が推測されていますが、子宮内胎児発育遅延の合併は少ないとする報告が多い。
・CAOSの経過中には、卵膜が脆弱化し前期破水に至る例や、卵膜の透過性が亢進し腟分泌物よりIGFBP-1が検出され破水と診断される例、また出血の血漿成分の流出が肉眼的に破水と誤認される例もあり、CAOSの診断は容易ではありません。
・徐々にCAOSの疑いが強くなる症例もあり、診断までに時間を要し苦慮する場合もあります。
・出生前にCAOSと疑い、診断することで、CAOSを合併しない早産時と比較 し、より慎重な新生児管理の必要性を予測することがで きると考えます。
・CAOSと新生児の肺疾患の関連について、胎児が血性羊水中に長期間存在することで、羊水中のへモジデリン等の血液分解産物が児の気管支上皮や肺胞を損傷することや、ヘモジデリンを貪食したマクロファージがサイトカインを産生し、細胞障害を生じることなどによると考えられています。びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシスは、胎盤での出血がマクロファージに貪食され、ヘモジデリン血漿として絨毛膜板や羊膜に沈着した病理学的所見です。びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシスと診断した46%にCAOSを認めた報告では、新生児遷延性肺高血圧症やdry lung症候群が発症しやすく、長期的には慢性肺疾患となる頻度が高いとされています。これまでの報告においても、CAOS15例中全例に絨毛膜羊膜炎を認めたもの、24例中10例に認めたもの、3例中2例に認めたものと、絨毛膜羊膜炎の合併は高率です。
・CAOSを疑った場合、周産期予後不良となることを予測した、厳重な妊娠管理が求められ、また患者家族への情報提供も必要と思います。
コメント
・CAOSの原因は不明ですが、胎盤形成不全(絨毛の子宮内膜への侵入が不十分)が関与しているように思われます。
・抗リン脂質抗体症候群や血液凝固異常などの、いわゆる不育症検査をしてみましょう。異常値が認められた場合には、妊娠判明時から胎盤完成(妊娠16週)までヘパリンを使用してみるという方法が考えられます。
・CAOSは発症してしまったら、確立された治療はありません。