2022/10/20
黄体化過剰反応(HL)
hCG;ヒト絨毛性ゴナドトロピン
「黄体化過剰反応」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)
良性卵巣腫瘍の診断と治療
第69回日本産科婦人科学会学術講演会 専攻医教育プログラム「腫瘍1」
附属器疾患 卵巣卵管の良性・悪性疾患 (umin.ac.jp)
黄体化過剰反応
・絨毛性疾患の際に多く認められるが、稀に正常妊娠でも認める。hCGの刺激で増大
・両側性、多数の拡張した卵胞嚢胞
・卵巣径が20cm以上に達することあり
・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と同様の所見
・時に粘液性腺腫と誤診
・自覚症状がなければ経過観察
自然単胎妊娠の後期にHLと診断した1例
contents.pdf (kaog.jp)
HLはhCGの刺激に対しての卵胞の過剰反応です。通常、両側性の多嚢胞性卵巣腫瘤とhCG高値を主徴とし、妊娠何れの時期にも発症します。
HLは高hCGの状態またはhCGに対する高感受性により、両側卵巣が多嚢胞性に腫大する反応性変化です。腫瘤の大きさは様々で何れの妊娠時期にも認められ、自然妊娠では比較的まれです。妊娠中期以降に検出される症例は多房性卵巣腫瘍との鑑別が必要とされ、内分泌検査や画像検査による検討が有効です。
妊娠中期に偶然発見されたhCG値正常のHL
75.pdf (panafrican-med-journal.com)
HLは、hCGの影響により妊娠中の卵巣が良性に肥大するまれな疾患です。
HLは、多胎妊娠、胎児水腫、特に妊娠性絨毛疾患など、hCG値の異常な上昇が検出される状況でしばしば遭遇します。HLは、絨毛癌の10%、奇胎妊娠の25%に認められます。
頻度は低いですが、PCOSなどhCGに対する卵巣間質感受性が亢進している患者や、糖尿病や排卵誘発の症例でも発症することがあります。
甲状腺刺激ホルモンとhCGの構造は類似しているため、甲状腺の影響を受けている女性ではHLになる可能性があります。
HLは一般的に無症状ですが、腹痛(52%)、吐き気、腹水、呼吸困難などの軽度の徴候が現れることがあります。
大きな卵巣は捻転や破裂の危険性があり、患者の生殖能力に影響を与え、出血性ショックを引き起こす可能性があります。
男性化徴候(多毛、にきび、脱毛、声のかすれ)もHLによく見られる症状で、25%の症例で報告されています。この現象は、アンドロゲン値の上昇によって説明され、82%の症例でPCOSが原因であることが分かっています。
以前は、帝王切開の際に偶然にHLが発見されることがほとんどでしたが、現在では、妊娠中に必ず受ける超音波検査で、両卵巣に大きな莢膜黄体化囊胞が多数認められ、「スポークホイール印」あるいは「ブドウの房」のように見えることから、HLと診断されるのが一般的です。
HLはしばしば悪性腫瘍や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と間違われることがあります。
HLを粘液性境界腫瘍などの悪性腫瘍と鑑別するためには、腫瘍マーカーを検査する必要がありますが、HLの場合は陰性です。
悪性腫瘍を除外するために超音波検査とMRIが必要です。
悪性腫瘍が強く疑われる場合、妊娠中に不必要な外科的介入を受ける可能性があります。
OHSSはHLと類似していますが、HLが通常妊娠第2期または第3期に発症するのに対し、OHSSは黄体期または妊娠第1期初期に発症します。HLは一般的に男性化徴候を伴いますが、OHSSではこのような徴候は非常に稀です。HLは通常無症状か軽い症状ですが、OHSSは通常腹痛と急性体液不均衡を引き起こし、重度の呼吸困難、腹水、血液濃縮、電解質異常、腎不全、血栓塞栓症につながる可能性があります。
妊娠中のHLの管理は、理想的には保存的です。
両卵巣は通常、出産または中絶の4〜6ヵ月後に通常の大きさに戻ります。
外科的治療は、卵巣捻転や嚢胞破裂など、出血性ショックを引き起こす可能性のある合併症の場合にのみ行われるべきです。
まとめ
黄体化過剰反応は、hCGによって両側卵巣が多房性に腫大する反応性の変化で、腫瘍ではなく妊娠終了後に正常化しますので、保存的治療が基本とされています。
HLが、妊娠終了後に長期間持続したり、巨大化することは稀です。
妊娠中の卵巣腫大は約0.2%にみられますが、約99%が良性とされます。悪性腫瘍の割合は約1%と低いので、悪性を疑い手術をする場合は、原則として術中迅速病理診断で悪性か良性かを確認します。