顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の子宮内注入

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の子宮内注入

「子宮内膜菲薄」と「着床障害」への取り組み

「顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の子宮内注入」  津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)

子宮内膜菲薄症例や、原因不明着床障害症例に対して、G-CSFを胚移植前の子宮内に注入すると有効なことがあります。

 

 

胚移植前の子宮内膜厚

 

7mm以下であると着床率が低下するとされています。

 

 

子宮内膜菲薄の原因と対応

 

原因

子宮内膜掻爬術や流産・中絶手術などによる、子宮内腔の癒着や変形

子宮奇形

子宮の血流不足

その他

 

対応

癒着剥離

新鮮胚移植、自然周期での凍結融解胚移植、ホルモン補充周期での凍結融解胚移植法など、移植方法の検討

エストロゲン(卵胞ホルモン)補充

低用量アスピリン

ビタミンE

L-アルギニン

シルデナフィルの経腟使用

遠赤外線温熱治療(サンビーマー)

漢方薬

その他(G-CSFなど)

 

 

G-CSFについて

 

顆粒膜細胞で産生

子宮内膜、卵管液・卵胞液中に存在

 

働き

卵胞発育

排卵

胚盤胞への発育

子宮内膜間質細胞の脱落膜化

栄養芽細胞の母体組織への浸潤

胎盤形成

その他

 

子宮内膜の菲薄化が原因不明の際には、G-CSFの作用が不十分ということも考えられます。

特に、年齢が上昇すると卵巣機能が低下し、エストロゲンの減少による子宮内膜の萎縮が生じます。エストロゲン減少期間が長期化した例では、G-CSFが有効なことがあります。

子宮内膜非薄に対するエストロゲン補充、低用量アスピリン、ビタミンEL-アルギニン、シルデナフィルの経腟使用、遠赤外線温熱治療(サンビーマー)、漢方薬などを行っても、胚移植前の子宮内膜厚が7mm以上に改善しない患者さんにG-CSF療法を検討します。

 

 

G-CSFの使用時期と使用方法

 

使用時期(例)

新鮮胚移植では、hCG使用日、胚移植の1時間前、採卵中などが考えられます。しかし、G-CSFの使用時期による効果の差があるとはされていません。

新鮮胚移植や自然周期での凍結融解胚移植ではhCG使用日にG-CSFも使用し、ホルモン補充周期での凍結融解胚移植では、胚移植決定日にG-CSFを使用するような方法もあります。

 

使用方法(例)

G-CSFの使用量:

  フィルグラスチム 100300μg

  量の多寡による効果の差は認められていません。

G-CSFの使用方法:腟を通して、子宮内に注入します。

 

 

子宮鏡下癒着剥離術後の子宮内膜増殖促進を目的としたG-CSFの子宮内投与
Intrauterine administration of G-CSF for promoting endometrial growth after hysteroscopic adhesiolysis: a randomized controlled trial | Human Reproduction | Oxford Academic (oup.com)

 

G-CSF注入は子宮内膜の厚さを有意に改善しました(7.91mm vs 7.22mm)。経時的な累積妊娠率および出産率も改善されました。

 

 

子宮内膜の薄い不妊女性に対するG-CSFの子宮内注入療法の有効性
Efficacy of intrauterine perfusion of granulocyte colony‐stimulating factor (G‐CSF) for Infertile women with thin endometrium: A systematic review and meta‐analysis – Xie – 2017 – American Journal of Reproductive Immunology – Wiley Online Library

 

G-CSF注入は、子宮内膜厚(1.79mm)、臨床妊娠率(2.52倍)および胚着床率を著しく改善し、周期キャンセル率(0.38倍)は低下し得ることが示されました。

 

 

体外受精における免疫療法の役割:ガイドライン
The role of immunotherapy in in vitro fertilization: a guideline (fertstert.org)

 

子宮内膜が薄い女性における子宮内膜の厚さや体外受精の臨床妊娠率を改善するために、局所的な G-CSF を推奨する、または推奨しないエビデンスは不十分です。

体外受精の成績を向上させるために G-CSF を局所的または全身的に投与することを推奨するエビデンスは不十分です。

 

 

反復着床不全に対するG-CSF療法の有効性の一報告
Treatment with granulocyte colony-stimulating factor in patients with repetitive implantation failures and/or recurrent spontaneous abortions – ScienceDirect

 

着床失敗を繰り返す患者および自然流産を繰り返す患者に対するG-CSF療法

G-CSFが、卵子と精子の成熟、子宮内膜の受容性、着床、胚と胎児の発育における重要なプロセスを制御している、あるいは制御する役割を果たしていると考えられています。

 

 

まとめ

 

子宮内膜の薄い不妊女性に対するG-CSFの子宮内注入は、子宮内膜を厚くし、臨床妊娠率と着床率、出産率を改善します。

子宮内膜の非薄、および、反復着床不全に対するG-CSF療法の効果は明らかではなく、十分な科学的根拠はありません。

G-CSFの作用機序は不明で、適応や使用量・期間・方法などは定まっていません。

しかし、G-CSFは薄い子宮内膜を厚くするだけでなく、子宮内膜が薄くても着床できるように内膜を変化させるという研究もありますので、他の治療で効果のない子宮内膜非薄、反復着床不全に対する治療の可能性の一つとして、G-CSF療法を検討することができます。