胚移植前後の夫婦生活

胚移植前後の夫婦生活

 

 

生殖補助医療における性交が妊娠率に及ぼす影響
effect of intercourse on pregnancy rates during assisted human reproduction | Human Reproduction | Oxford Academic (oup.com)

 

体外受精周期中の性交は、精液への曝露が動物における胚の発育と着床を促進することが報告されているため、妊娠率を向上させる可能性があります。

性交によって誘発される子宮収縮や感染の持ち込みは有害な影響を与える可能性があります。

移植の時期に腟内性交を行った群と控えた群について、妊娠率に関しては、23.6%と21.2%と有意差はありませんでしたが、妊娠68週で胎児が生存している割合は、腟内性交を行った群で1.48倍でした。

胚移植の時期に精液にさらされると、初期胚の着床と発育が成功する可能性が高くなります。

 

 

精液と胚移植のための制御性T細胞の生成
Seminal Fluid and the Generation of Regulatory T Cells for Embryo Implantation (wiley.com)

 

体外受精後の着床率と出生率は、妊娠開始時に精液に暴露することで著しく向上します。

 

 

制御性T細胞は着床期と妊娠初期に重要な役割を果たす
妊娠維持機構/ 流産に関連するトピックス 日本産婦人科医会 (jaog.or.jp)

(制御性T細胞;自己に対する免疫の抑制)

 

体外受精周期中に禁欲せず、性交渉を持った方が、妊娠率、生児獲得率が高かったとする報告もある。精漿のプライミングは妊娠成立に必須ではないが、有益に作用している。

(プライミング;先行する刺激)

 

 

着床前後の性交は妊娠率を低下させます
Peri-implantation intercourse lowers fecundability (fertstert.org)

 

着床前後に2日以上性交した周期は、性交しなかった周期に比べて妊娠検査陽性になる確率が有意に低値でした(0.62倍)。

着床前後の時期に性交することは、自然妊娠に悪影響を及ぼす可能性があります。

着床前後の性交日数別の妊娠率

1日      0.98

2日      0.76

3日以上    0.52

 

 

精漿とは

 

精液から精子を除いた部分のことです。

精嚢と前立腺から分泌されます。

 

 

精漿の働き

 

子宮内には精子を死滅させる殺精子因子が存在し、精漿はその因子から精子を保護する作用があります。

これによって選ばれた精子が卵と受精可能になります。

この機構異常は不妊原因の一つなる可能性があります。

 

 

生殖医療への精漿の影響に関する報告例

 

原因不明不妊症で、事前に採取した精漿を腟内に注入した後に性交すると着床率が上昇する。

生殖補助医療の採卵日に、採取した精液の一部を子宮腔内に注入すると妊娠率が上昇する。

人工授精や胚移植の前後に夫婦生活を持つと、妊娠率が上昇する。

 

 

まとめ

 

胚移植前後や着床時期の夫婦生活が、妊娠へ好影響か悪影響かはわかっていません。

性交による子宮収縮を危惧する医師は控えるように指導するでしょうし、免疫寛容を信じる医師は勧めると思います。

シリンジ法で妊娠する事実より、性行為がなくても子宮は収縮してスポイトのように精液を吸い上げていることが推測できます。また、「着床前後の性交日数別の妊娠率」のデータより、1日のみでは妊娠率は0.98とほとんど低下していません。

免疫寛容の重要性やその効果を考慮して、胚移植前日に1日だけ夫婦生活を持ってみてはいかがでしょうか?

 

 

 

「胚移植前後の夫婦生活」  津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)