2022/07/09
スティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS、皮膚粘膜眼症候群)
スティーヴンス・ジョンソン症候群(指定難病38) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
スティーヴンス・ジョンソン症候群(指定難病38) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
1.概要
38℃以上の高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、鼻、外陰部などの粘膜を含む全身に紅斑(赤い斑点)、びらん(ただれ)、水疱(水ぶくれ)が多発し、表皮の壊死性障害を認める疾患です。
スティーヴンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症は重症多形滲出性紅斑といわれる同じ疾患群に含まれ、びらんや水疱など皮膚の剥がれた面積が全体表面積の10%未満の場合をスティーヴンス・ジョンソン症候群と呼んでいます。
人口100万人当たり年間に発症する頻度は約3.1人です。好発年齢や男女差はありません。
2.原因
薬剤やマイコプラズマ感染、ウイルス感染などが契機となり、免疫学的な変化が生じ、主として皮膚・粘膜(眼、口腔、陰部など)に重篤な壊死性の病変がもたらされると推定されています。
薬剤として多いのは解熱消炎鎮痛薬(痛み止め、熱冷まし)、抗菌薬(化膿止め)、抗けいれん薬、高尿酸血症治療薬、消化性潰瘍薬などで、総合感冒薬(風邪薬)のような市販薬も原因になることがあります。
遺伝ではありません。
3.症状
全身症状としては、高熱、全身倦怠感、食欲低下、のどの痛みなどが認められ、皮膚病変では全身に大小さまざまな滲出性紅斑、水疱を有する紅斑~紫紅色斑、びらんが多発散在します。非典型的ターゲット(標的)状紅斑の中心に水疱形成がみられます。
口唇・口腔粘膜、鼻粘膜には発赤、水疱、びらん、疼痛が出現し、血性痂皮を付着するようになります。
眼では結膜の充血、まぶたの腫れ、めやに、目が開けづらい、偽膜形成、眼表面上皮(角膜上皮、結膜上皮)のびらん(上皮欠損)などが認められ、重篤な眼病変では後遺症を残すことが多くあります。
尿道や肛門周囲にもびらんが生じて出血や、排尿痛、排便痛をきたすことがあります。
いずれも進行がはやく症状は急激に拡大します。
時に上気道粘膜や消化管粘膜を侵し、呼吸器症状や消化管症状を併発します。
4.治療
早期診断と早期治療が大切です。
まず感染の有無を明らかにした上で、被疑薬の中止を行い、原則として入院の上で加療します。
発疹部の局所処置に加えて厳重な眼科的管理、補液・栄養管理、呼吸管理、感染防止が重要です。
ステロイド薬の全身投与を第一選択とします。重症例においては発症早期(発症7日前後まで)にステロイドパルス療法を含む高用量のステロイド薬を開始し、発疹の進展がないことを確認して減量を進めます。
ステロイド薬投与で効果がみられない場合には、免疫グロブリン製剤大量静注療法や血漿交換療法を併用します。
眼後遺症に対して輪部支持型角膜形状異常眼用コンタクトレンズは、疾患状態の悪化抑制に基づく視力改善、ドライアイ症状の緩和をもたらします。
5.予後
多臓器不全、敗血症などを合併することがあります。
死亡率は約3%です。皮膚や粘膜の病変の範囲が広い場合、高齢者、糖尿病や腎疾患が基礎にある場合は死亡率が上昇します。
皮膚粘膜移行部や粘膜の瘢痕化をきたし、失明に至る視力障害、瞼球癒着、角膜潰瘍、ドライアイなどの眼後遺症を残すことが多くあります。
閉塞性細気管支炎による呼吸器傷害や外陰部癒着、爪甲の脱落、変形を残すこともあります。
6.日常生活の注意
何らかの薬を飲んでいて38℃以上の高熱、口唇・口腔のびらん、眼の充血、皮膚の広範囲に紅斑が生じた場合には医師・薬剤師に相談する必要があります。
薬の服用後2週間以内に発症することが多いですが、数日以内あるいは1ヶ月以上経ってから起こることもあります。
薬剤によりスティーヴンス・ジョンソン症候群を発症した場合には、原因となった薬剤の名称を「お薬手帳」に記しておいてください。担当医に記載して頂くのも良い方法です。医療機関を受診する際には、必ず「お薬手帳」を持参し、過去の皮膚や粘膜に出現したエピソードを担当医や薬剤師に伝えて下さい。
ご自身で市販の薬剤を購入される場合にも薬剤師に「お薬手帳」を提示してください。同じ薬剤の成分でも異なる名前で販売されている場合がありますので、ご注意ください。
「スティーヴンス・ジョンソン症候群」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)