低分子ヘパリンと未分画ヘパリン

低分子ヘパリンと未分画ヘパリン

 

 

止血の仕組み

 

血液凝固因子の第Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ因子が、損傷した血管中膜のコラーゲンのような異物に接触することによって活性化し、内因性凝固が始動します。

怪我により血管外に出た血液は、血管外の組織液と接触することにより凝固因子、第Ⅲ、Ⅶ因子が活性化し、外因性凝固が始動します。

これらの凝固反応により、最終的に第Ⅰ因子フィブリノゲンという接着剤の元になり、固まって網を作ります。

 

 

低分子ヘパリンと未分画ヘパリンの違い

 

未分画ヘパリンは、平均分子量1000015000で、分子量の異なるものの複合体、つまり未分画です。

一方、低分子ヘパリンは、分子量40006000の低分子が分画されています。

 

 

未分画ヘパリンによる血栓予防の仕組み

 

血液凝固を抑制する働きのあるアンチトロンビンⅢに未分画ヘパリンが結合して、Xa因子とトロンビンを阻害し、内因性凝固と外因性凝固の一連の凝固反応を阻害して、網を作れないようにします。

こうして、血栓が作られることを予防します。

 

 

低分子ヘパリンによる血栓予防の仕組み

 

アンチトロンビンⅢに低分子ヘパリンが結合してトロンビンを阻害し、内因性凝固と外因性凝固の一連の凝固反応を阻害して、網を作れないようにします。

こうして、血栓が作られることを予防します。

 

 

低分子ヘパリンの効果を認めない論文

 

非血栓性女性における体外受精/顕微授精妊娠の成績に対する低分子量ヘパリンの有効性:メタアナリシス
Efficacy of low‐molecular‐weight heparin on the outcomes of in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection pregnancy in nonthrombophilic women: a meta‐analysis – Yang – 2018 – Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavica – Wiley Online Library

 

生児率、臨床妊娠率、流産率については、低分子ヘパリン群と対照群との間に有意差は認められませんでした。

 

 

低分子ヘパリンの効果を認める論文

 

原因不明の反復性流産を有する女性の生殖転帰に関する多施設共同観察研究からの所見
Findings from a multicentre, observational study on reproductive outcomes in women with unexplained recurrent pregnancy loss: the OTTILIA registry | Human Reproduction | Oxford Academic (oup.com)

 

マッチさせた265人の妊婦のサンプルを分析し、全員が血栓性素因スクリーニングを受けました。血栓性素因のある119人中103人(86.6%)、ない146人中98人(67.1%)に低分子ヘパリンおよび/またはアスピリンが処方されました。

全体として、204例(77%)で生児出産が記録され、61例(23%)で流産または子宮内胎児死亡が記録されました。

ロジスティック回帰では、血栓性素因と低分子ヘパリンによる治療との間に有意な相互作用が認められました(P = 0.03)。

感度分析の結果、遺伝性または後天性血栓性素因の女性において、何の治療も行わない場合の流産のオッズ比(OR)は2.995CI1.4-6.1)であり、低分子ヘパリン(アスピリンありまたはなし)の投与は生児出産の高いオッズ(OR10.695CI5.0-22.3)と関連していることが明らかにされました。

さらに、血栓性素因のない女性では、生児出産のオッズは低分子ヘパリン予防(単独またはアスピリンとの併用)と有意かつ独立に関連していました(OR3.695CI1.7-7.9)。

 

 

低分子ヘパリンの効果を認める論文

 

反復流産歴のある患者に対する低分子ヘパリン使用の有効性:系統的レビューおよびメタ解析
Effectiveness of the use of Low Molecular Heparin in patients with repetition abortion history: Systematic review and meta-analysis
JBRA Assisted Reproduction

 

解析項目:臨床妊娠、着床率、生児、流産、早産、妊娠、妊娠継続、妊娠第20週以降、先天性異常、出血、子癇前症、胎盤早期剥離。

結果:低分子ヘパリン群では妊娠20週以降の継続妊娠の発生率が高く、その他の変数の解析では低分子ヘパリン群との間に有意差はありませんでした。

結論:低分子ヘパリンの使用によりリスクおよび/または少ないことを示すデータは見つからず、逆に低分子ヘパリンの使用は妊娠20週目以降の進化的妊娠の発生率を増加させました。

低分子ヘパリンは、原因不明の流産を繰り返す場合の予防的治療に何らかの影響を及ぼします。

 

 

未分画ヘパリンの他の効果

 

 未分画ヘパリンには、抗凝固作用以外にも、抗炎症作用や血管新生、トロホブラストの侵入促進など着床促進作用があるために、反復着床不全で使用されることがあります。

 採卵、または胚移植時からの未分画ヘパリンの使用により、妊娠率、出生率の改善が報告されている一方、これらは血栓性素因を有する反復着床不全の場合で、原因不明の反復着床不全での効果は確認されていないという報告もあります。

 

 

 

 

https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12749566623.html