炎症性腸疾患を合併した妊娠

炎症性腸疾患を合併した妊娠

 

 

-妊娠を迎える炎症性腸疾患患者さんへ-
03.pdf (ibdjapan.org)

 

炎症性腸疾患(IBD)とは、慢性再燃性の腸管の炎症性疾患で、潰瘍性大腸炎とクローン病が含まれます。

患者数は潰瘍性大腸炎が約16.6万人、クローン病が約4万人で、増加しています。

20歳代など若年の男女に多いため、病気や治療による妊娠や出産への影響を不安に感じている人は少なくないと考えられます。

潰瘍性大腸炎とクローン病は、原則的に妊娠・出産を回避する必要はありません。

治療の多くは、妊娠・出産に悪影響を及ぼしません。

不安のために治療をせず、病状の悪化を招いたり、妊娠・出産の危険性を高めないようにしましょう。

 

 

月経や、妊娠準備

 

IBD再燃時やステロイドホルモン剤治療中、手術直後などは、一時的に月経不順や無月経になることがあります。

IBDが落ち着いた状態(寛解期)では、妊娠・出産に及ぼす影響は少ないと考えられています。

活動期(病気が再燃している状態)に妊娠した場合は、流産や早産、帝王切開、低出生体重児、先天異常などの確率が高くなるとされています。

潰瘍性大腸炎治療薬のサラゾスルファピリジン等は葉酸拮抗作用を有しますので、神経管閉鎖障害(二分脊椎、脳瘤、無脳症等)発生のリスクが上昇するとされますが、葉酸を一緒に服用することによってそのリスクを低減する可能性があるとされています。

 

 

妊娠中

 

クローン病では、妊娠による病気の寛解や再燃はあまりないようです。

潰瘍性大腸炎寛解期での妊娠では、再燃の頻度には影響はありません。

潰瘍性大腸炎活動期での妊娠では、活動性を抑えることが難しくなることが若干増えます。活動期のまま出産した場合、病気が悪化する危険が増すとする報告もあります。

一般に、ホルモンの状態が大きく変化する妊娠初期の3ヶ月間と、出産後の3ヶ月の時期に、潰瘍性大腸炎の再燃が多いとされています。

 

 

子供への遺伝 
参考 クローン病(指定難病96) 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
    潰瘍性大腸炎(指定難病97) 難病情報センター (nanbyou.or.jp)

 

IBDの原因はわかっていませんが、遺伝病ではありません。

免疫が正常に機能しない自己免疫反応の異常などが考えられています。

人種や地域によって発症する頻度が異なったり、家族内発症が認められるなど、何らかの遺伝的因子が関与していると考えられています。発病しやすい遺伝子型がありますが、その型を持っていても発症しないこともあります。

遺伝的要因と食生活、喫煙などの環境要因などが複雑に絡み合って発病するものと考えられています。

 

 

薬の子供への影響

 

5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤(サラゾピリン® 、ペンタサ®、アサコール®、リアルダ® )は安全な薬剤と考えられています。

副腎皮質ステロイド(プレドニン® 等)に関しては、過去に報告された口蓋裂は新しい大規模な研究では認められていません。

TNFα抗体製剤(インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)等)は比較的安全とされています。胎盤移行性のために妊娠中期から後期にかけて母体の血中濃度を上回る濃度の薬物に胎児が暴露されることが知られていますので、妊娠24~26週で終了となることも多いです。

免疫調節薬のアザチオプリン (イムラン®、アザニン® )や6-メルカプトプリン(ロイケリン® )、シクロスポリン(サンディミュン® )やタクロリムス(プログラフ® )も用いられます。

いずれの薬剤に関しても、 流産、早産、胎児奇形の危険が高まることはなく、逆に、治療中断により病気が悪化すれば、流産や早産の危険が高まると考えられています。

 

 

妊娠中に再燃した際の、治療と検査

 

治療

非妊娠時と同様な治療が行われます。

胎児への悪影響は、再燃の病状の方が、薬より大きいと考えられるからです。病気を安定させるために、積極的に治療を行うことが重要です。

外科治療は、母児に大きな負担がかかります。再燃を防ぐために、積極的に内科治療を行うことは極めて重要です。

 

検査

大腸内視鏡検査は、刺激になるためできる限り控えたほうが良いとされています。症状がない寛解期では大腸内視鏡検査は行わないのが通常です。

増悪した場合には、S状結腸までの内視鏡検査は比較的安全に行うことができるとされています。

超音波やMRI検査は通常に行うことが可能で、腸管の肥厚や炎症の程度、病変範囲を把握するのに有効であるとされています。

注腸検査や腹部CTなどの腸管を評価するための放射線検査は可能な限り控えます。ただし、胎児に悪影響を与えることが分かっている放射線被ばく量に比べて一般的なX線検査、CT 検査の1回の被ばく量ははるかに低いため、たとえ妊娠中に検査を受けたとしても多くは問題になりません。

 

 

分娩

 

妊娠中にIBDが活動期である場合、出産前後に病気が悪化する危険性があります。

通常は普通分娩で問題ありません。

クローン病で肛門病変がある場合や潰瘍性大腸炎の術後の方の場合は、会陰 切開を行う際に留意が必要な場合や、帝王切開が望ましい場合があります。

 

 

授乳

 

IBD患者の授乳に関して、特別な制限はありません。

薬の成分が微量ですが、乳汁に移行・分泌されます。メソトレキセート・ サリドマイドは原則として禁止されていますが、ほかの多くの薬は、重大な悪影響は報告されていません。

 

 

男性患者の妊娠への影響

 

IBDが、男性不妊の原因となることはありません。

腸管切除のような手術が男性の性機能障害の原因となることはきわめて稀です。

サラゾスルファピリジン(サラゾピリン® )は精子の数や運動能を低下させ、男性不妊の原因となります。この影響は可逆的で、内服を中止すれば23ヶ月でもとに戻ります。

メサラジン(ペンタサ® 、 アサコール® )は精子に影響を与えず、男性不妊の原因とはなりません。

 

 

全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、 若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD) 罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針
sisin201803.pdf (ra-ibd-sle-pregnancy.org)

 

IBDに関する内容の要約

 

 

妊娠希望がある時

 

妊娠は可能ですが、病状が寛解状態にあることが望ましいです。

活動期にある場合は、寛解状態に入ってからの妊娠が勧められます。

妊娠前の病状によっては、妊娠中の増悪や妊娠合併症と関連が見られますので、妊娠後は内科と産婦人科で共同管理します。

治療薬には妊娠中・授乳中に中止すべきものと、継続可能なものがあります。妊娠中に禁忌となる薬剤は切り替えを考慮します。病状により、妊娠中に使用禁忌となる薬剤を、他の薬剤に切り替えできない場合は、内服を継続した場合のリスク・ベネフィットについて理解することが必要です。

 

妊娠容認基準

 

妊娠中使用可能な薬剤で疾患がコントロールされ、寛解状態であることが望ましいです。クローン病の場合、活動期の妊娠は早産のリスクを上昇させることが報告されています。

 

 

妊娠中・産褥期に寛解、増悪しますか?

 

寛解期であれば疾患の再燃のリスクは低いですが、活動期であれば病状の持続あるいは増悪と関連します。

潰瘍性大腸炎では非妊娠時と比較して、妊娠中および産褥期に再燃リスクが上昇します。

クローン病では非妊娠時と比較して、妊娠中および産褥期の再燃リスクは上昇しませんが、罹患期間が5年以上の例では妊娠中の再燃リスクが上昇します。

妊娠中の静脈血栓塞栓症のリスク分類で、IBDは中間リスクとなっているため、妊娠中ならびに分娩後の血栓塞栓症の予防として、抗凝固療法を考慮します。

 

問診、検査

 

妊娠・分娩歴と治療薬などを聞かれます。

血中アルブミン値、赤沈、白血球数、CRP値は疾患活動性の評価に用いられますが、妊娠では生理的に低アルブミン血症、赤沈亢進(貧血となるため)、白血球増加が見られます。12,000/μLまでの白血球増加は妊娠中に生理的にみられます。

したがって、検査所見よりも下痢や血便などの臨床症状を評価の主体とする必要があります。上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査、S状結腸内視鏡検査は、前処置(下剤の使用や絶食など)を含めて妊娠中も比較的安全とされていますが、強い適応がある場合のみ施行されます。

 

 

高次医療機関で産科管理をした方が良いでしょうか?

 

非活動性のIBDは妊娠予後に影響しないという報告がありますので、一次施設での妊娠分娩管理でよいです。

IBD合併妊娠では、一般妊婦と比較して早産、低出生体重児、帝王切開率、児の先天性疾患のリスクが有意に上昇し、とくに活動期のIBD合併妊娠でこれらのリスクがさらに上昇します。

妊娠合併症の頻度は、活動期のIBD合併妊娠で55%、寛解期で36%ですので、活動期では、高次医療機関での管理が推奨されます。産婦人科と内科が密に連携が取れている場合はこの限りではありません。

 

分娩方法

 

寛解期のIBDに関しては通常分娩管理でよく、また帝王切開の適応も通常と変わらないとされています。

活動性の肛門周囲病変や直腸病変がある場合は、帝王切開が考慮されます。回腸嚢または回腸直腸吻合術後の場合は帝王切開の相対的適応となります。

 

 

新生児ケア

 

児は母体と同様の症状を呈しません。

母体が使用する薬剤の影響は考慮する必要があります。

母体が妊娠中に生物学的製剤(抗体製剤)を使用している場合、 その影響が生後数か月残存している可能性があり、児の生ワクチン(BCG、ロタウイルス)の接種において注意が必要です。

 

 

 

 

https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12749214989.html