2022/06/16
低用量アスピリン服用中の女性では、妊娠初期に絨毛膜下血腫(SCH)が増加します
妊娠中の患者における絨毛膜下血腫の有病率について
合計533名の女性が対象基準を満たし、登録されました。
533人の女性のうち、321人の不妊症患者が研究群に含まれ、212人の一般産科患者が対照群に含まれました。
研究群には、不妊症と診断された女性233名と不育症と診断された女性88名が含まれていました。
研究群の平均母体年齢は34.6±4.9歳(範囲22-48)で、対照群の30.6±5.1歳(範囲16-44)よりも大きくありました。
平均妊娠週数は研究群8.1±1.7週、対照群8.3±2.0週で、研究群に比べ対照群で流産が多くありました。
研究群では不育症と診断された女性88人が含まれていたため、流産が多くありました。
SCHは研究群の129/321人(40.2%)の女性に確認されましたが、対照群では23/212人(10.9%)の女性にだけに確認されました(P<0.0001)。
SCHは不育症の女性41/88人(46.6%)に対して、不妊症の女性88/233人(37.8%)で確認されました(P=.1618)。
不妊治療クリニック患者におけるアスピリン使用が絨毛膜下血腫の発生頻度に及ぼす影響について
また、使用した不妊治療の方法がSCHの発生頻度に影響するかどうかも検討しました。
自然妊娠、クロミッド、レトロゾール、卵胞刺激ホルモン(FSH)、体外受精など、治療方法にかかわらず、これらの妊娠方法によるSCH頻度の有意差は認められませんでした(P=.4345)
研究群の女性321人のうち、233人がアスピリンを服用しており、88人がアスピリンを服用していませんでした。
アスピリンを使用していない女性の12/88人(13.6%)がSCHを有していましたが、アスピリンを使用している女性の117/233人(50.2%)がSCHを有していました(P<0.0001)。
これらの結果は、アスピリンの使用によりSCHの頻度が有意に増加することを示しています。
逆に、ヘパリン使用の有無でSCHの頻度に有意差はありませんでした。
対照群には、アスピリンやヘパリンを使用している女性はいませんでした。
不育症で低用量アスピリンやヘパリンを使用している場合は、絨毛膜下血腫や性器出血が見られたとしても、不育症治療のためにすぐにこれらを中止するわけにはいきません。
「アスピリンの使用によりSCHの頻度が増加し、ヘパリン使用の有無ではSCHの頻度に差がありません」との結果より、中止する場合は低用量アスピリンにしてみましょう。また、低用量アスピリンのみを使用して場合は、ヘパリンに変更してみましょう。
ヘパリンには、着床促進作用、妊娠率、出生率の改善が報告されています。
薬剤の中止により、ヘパリンの効果はすぐに消失し、更に拮抗薬がありますが、アスピリンは1週間くらいかかるとされ、拮抗薬はありません。
ヘパリン®の作用
ヘパリン®には、抗凝固作用以外にも、抗炎症作用や血管新生、トロホブラストの侵入促進など着床促進作用があるために、反復着床不全で使用されることがあります。
採卵、または胚移植時からのヘパリン®の使用により、妊娠率、出生率の改善が報告されている一方、これらは血栓性素因を有する反復着床不全の場合で、原因不明の反復着床不全での効果は確認されていないという報告もあります。
https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12748511537.html