2022/06/14
葉酸と神経管閉鎖障害
4月3日は葉酸の日
神経管閉鎖障害は、先天異常疾患の中で唯一予防可能です。
神経管閉鎖障害とは
先天性の、脳や脊柱に発生する癒合不全
1)無脳症 発症頻度 0.32/出産1万
2)脳瘤 0.32 /出産1万
3)二分脊椎 5.59 /出産1万
(日本 2013年)
二分脊椎は、2000年の葉酸サプリメント摂取勧告後も減少傾向は見られていません。
神経管の閉鎖は複数個のジッパーが閉じるように進みます。
無脳症は2の閉鎖障害、二分脊椎は5の閉鎖障害で発生します。
神経管閉鎖障害の予後
脊髄髄膜瘤を伴う新生児は、生後24時間以内での手術により、生存できるようになりました。
しかし患児の大多数は、その後に水頭症、尿・便失禁、歩行障害、脊椎側弯症などとなり、脳室–腹腔シャント術、導尿、下部尿路手術、下肢と脊柱の矯正手術、生涯にわたる通院やリハビリなどが必要となります。
無脳症は生後数時間で死亡します。90%以上の胎児は人工妊娠中絶を受けています。
神経管閉鎖障害のリスク因子
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1.葉酸サプリメントを妊娠前1カ月から妊娠3カ月まで内服しないことにより、2.5倍
2.3親等内に脊髄髄膜瘤患者がいると、4.26倍
3.葉酸サプリメントを併用せずに抗てんかん薬を内服すると、20.2倍
4.血清ビタミンB12の低値で、2.9倍 など
神経管閉鎖障害の初発予防
妊娠が成立する1か月以上前からの葉酸サプリメント摂取が有効です。
神経管の閉鎖は妊娠6週末で完成しますので、妊娠に気づいてからの葉酸服用では遅すぎます。
厚生労働省は、1日0.4mgが神経管閉鎖障害発症リスク低減の最低摂取量としています。
米国では1日0.4~0.8mgのサプリメントでの葉酸摂取が推奨されています。
神経管閉鎖障害を防止するための最小必要量は血清葉酸濃度7.0ng/mL以上です。
葉酸サプリメン購入の際は、「400μg」(以上)を確認して下さい。
自己判断で、1,000 μg以上を摂取してはいけません。
葉酸は、流産の防止、胎盤早期剥離の防止などの効果も指摘されています。
再発リスクと予防
神経管閉鎖障害児の妊娠出産既往がある女性では、第2子の再発リスクは一般女性に比し10倍以上高いとされています。
医師の管理下に、妊娠前から妊娠11週まで1日4~5mgの葉酸摂取をお勧めします。
1日0.4mgの葉酸摂取(一般的なサプリメントの含有量)が神経管閉鎖障害の発症率を36%低下させることに対し、1日4mgの摂取では約80%、5mgの摂取では約85%の発症率の低下が予測されます。
全妊娠期間を通じて摂取してもよいとされていますが、運動神経発達遅延など長期服用による有害事象が否定できない報告がありますので、妊娠12週になりましたら、速やかに1日0.4㎎に戻しましょう。
葉酸を含む食材
葉酸は、海苔、うに、すじこ、イクラ、菜の花、アスパラガス、ブロッコリー、ニンニクの芽、枝豆、芽キャベツ、ほうれんそう、オクラ、パセリ、大豆、マンゴー、ライチ、イチゴ、アボカド、レバー、卵黄、煎茶、抹茶、玉露など、多くの食材に含まれています。
加熱処理による活性喪失や、水溶性のためのお湯への流出、更には消化や吸収を考慮すると、生体への利用率は約50%とされています。
葉酸サプリメントは、生体内での利用率が85パーセントとされています。
葉酸錠
津田沼IVFクリニックでは葉酸錠(フォリアミン錠5mg)を1錠20円(税込み)で処方しています(他に診察料や処方料などが必要です)。
サプリメントを10倍服用するようなことをしてはいけません。
てんかんや潰瘍性大腸炎を治療中の方へ
カルバマゼピンやバルプロ酸等の抗てんかん薬や、潰瘍性大腸炎の治療薬サラゾスルファピリジン等は、葉酸拮抗作用があるために神経管閉鎖障害発生の危険性を上昇させます。
葉酸を同時に服用することにより、その危険性を減らすことができる可能性があるとされています。
抗てんかん薬やサラゾスルファピリジン等を服用中の女性は、非妊娠時から葉酸を補充しましょう。量に関する科学的根拠はありませんが、1日2~3mgと、通常量より多い摂取の報告があります。
神経管閉鎖障害の発症要因は多因子
神経管閉鎖障害の発症要因は多因子ですので、必ずしも葉酸摂取不足が神経管閉鎖障害児出産に寄与したわけではありません。
葉酸を内服していても第2子での発症をすべて防げるわけではありません。
葉酸抵抗性の神経管閉鎖障害は約10%とされています。ミオイノシトール1日1gの服用で減少したとする報告があります。
https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12748160368.html