絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫

ホルモン補充による凍結融解胚移植で、発生率は増加する?

 

 

絨毛膜下血腫とは
参照 「産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020」 gl_sanka_2020.pdf (jsog.or.jp)

 

妊婦の超音波検査で胎囊の周辺に低吸収領域を認める場合があり、絨毛膜下血腫(Sub Chorionic Hematoma ; SCH)と呼ばれます。

休職や安静による流産予防効果は確立されていません。

SCHを伴う切迫流産では自然流産のリスクが上昇し、ベッド上安静が流産率を下げるとの報告がありますがエビデンスレベルは低いです。

妊娠中に何らかの就労を行った妊婦はそうでない妊婦に比し切迫流産、流産率ともに有意に高いとし、労作負荷は流産のリスクとなりうるとの報告があります。

40時間以上の勤務や固定された夜勤、あるいは夜勤を含むシフト勤務、一日6時間を超える立位での作業をした妊婦では流産率が高いという報告があります。

 

 

不妊症患者における絨毛膜下血腫の影響を受けた妊娠の転帰について
Outcomes of subchorionic hematoma‐affected pregnancies in the infertile population – Inman – – International Journal of Gynecology & Obstetrics – Wiley Online Library

 

絨毛膜下血腫の有病率は12.5%(n151)で、不妊治療の種類による差はありませんでした。

絨毛膜下血腫と第一期流産との間に関連はありませんでしたが、絨毛膜下血腫のある患者のうち、出血と腹痛の両方を報告した患者は、症状のない患者と比較して流産の確率が高値でした(0.62 vs. 0.12, P <0.001).

この集団の生児率は81.3%で、絨毛膜下血腫の有無による妊娠転帰の統計的有意差は認められませんでした。

 

 

ホルモン補充および自然周期での単一凍結胚移植における絨毛膜下血腫の比較
Comparison of subchorionic hematoma in medicated or natural single euploid frozen embryo transfer cycles – Fertility and Sterility (fertstert.org)

 

選択基準を満たした凍結胚移植周期は1,273周期でした。

SCHの頻度は、ホルモン補充周期と比較して自然周期で低値でした(P<.05;相対リスク = 0.4 [0.27-0.78];オッズ比 = 0.4 [0.23-0.75])

プロゲステロン開始日(P<.001)および周期28日目(P<.001)の血清エストロゲン値は、自然周期と比較してホルモン補充周期で高値でした。

しかし、同じ時点の血清エストロゲン値は、ホルモン補充周期でも自然周期でもSCHの形成とは関連がありませんでした。

 

 

ホルモン補充周期の凍結融解胚移植による妊娠では、妊娠黄体の形成がなく、卵胞ホルモンと黄体ホルモンは内服や貼付、塗布、注射、腟内挿入などという形で外から補充され、妊娠を維持します(外因性)。

新鮮胚移植や、自然排卵周期での凍結融解胚移植による妊娠では、妊娠黄体が形成され、妊娠継続に必要な卵胞ホルモンや黄体ホルモン、その他の物質(リラキシンや血管内皮細胞増殖因子など)が分泌されます(内因性)。

この外因性と内因性の違いによるホルモン量の差や、「その他の物質」の有無、更に、卵巣機能が良好な場合には自然周期、良好でない場合にはホルモン補充周期が選ばれることもありますので、これらの理由により、 「SCHの頻度は、ホルモン補充周期と比較して自然周期で低値でした」という結果に繋がるのかも知れません。

 

 

 

 

 

「絨毛膜下血腫」  津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)