顕微授精での受精障害

顕微授精での受精障害

 

 

顕微授精に必要な精子の条件

 

正常なDNA

 

正常な卵子活性化

顕微授精で受精しなかった卵子の60%以上が、卵子の活性化が起きていませんでした(卵活性化不全)。

 

 

顕微授精での受精障害の頻度

 

全く受精しない完全受精障害の頻度は数%です。

卵子数が1個など、卵子数が少ないほど受精障害の確率が増えます。

完全受精障害の反復は10数%です。

十分な数と運動性のある精子でも受精しないことがあり、受精障害の原因は精液所見に限定されるものでありません。

 

 

顕微授精での受精障害への対応
卵活性化処理

 

カルシウムイオノフォア処理法

電気刺激法

ストロンチウム処理法

その他

 

 

卵活性化とは

 卵子の減数分裂の再開

 

 卵母細胞は黄体化ホルモンの刺激を受けると、減数分裂を再開します。第一減数分裂が完了すると、第一極体が放出されます。

精子の侵入によって第二減数分裂が再開すると、第二極体が放出され、雌性前核と雄性前核を持つ前核期胚となります。

極体はいずれも退化します。

 このように、一時停止していた卵子の細胞分裂が精子との融合をきっかけに再開することを、卵子の活性化といいます。

 

 

人為的卵活性化処理 AOA

 

卵活性化は精子が卵子細胞膜に接着して起こりますが、化学的刺激や物理的刺激などのAOAによっても起こすことができます。

例えば、紫外線刺激、卵細胞質内精子注入法ICSI、浸透圧変化刺激、電気刺激、各種化学物質処理 (カルシウムイオノフォア、ストロンチウム、ピューロマイシン、シクロヘキサミド、ロスコピチンなど)によって起こります。

 

 

カルシウム振動

 

卵子に精子が受精すると、ホスホリパーゼゼータ(PLCζ)が、卵子の中に入ります。

PLCζはイノシトール 3 リン酸(IP3) を産生し、カルシウムイオン( Ca2+ )を貯蔵している

小胞体から、Ca2+を放出します。

これらにより、 Ca2+濃度が上昇と下降を繰り返すカルシウム振動が数時間起こって、

卵子の活性化と正常な胚の発生を促します。

 

 

AOAの一方法

 

カルシウムイオノフォア法

卵子細胞膜の修復を考慮してICSI30分後に、光で分解される化学物質の含まれた培養液に遮光の上で卵子を約10分間浸し、その後、卵子を培養液で3回以上十分に洗浄します。

これにより細胞外カルシウムが細胞内に移動して、卵子細胞内のカルシウムイオンが一過性に上昇して、卵子が活性化されます。

補助卵活性化

 受精率が0%の完全受精障害がICSIで反復して見られた場合に、AOAを併用する方法です。

レスキュー卵活性化

 ICSIによる受精判定を約5時間以内に行い、完全受精障害の卵子にAOAを行う方法です。

 

 

AOAの効果

 

カルシウムイオノフォアによるAOAでは、妊娠率、出生率、受精率、卵割率、胚盤胞形成率、着床率で上昇がみられました。

ストロンチウムとカルシウムイオノフォアによるAOAでは、ICSI単独に比べて臨床的妊娠率が上昇します。ICSIで低受精率ではストロンチウムが有効、男性不妊症ではがカルシウムイオノフォア有効でした。

 

 

AOAの危険性

 

現在のところ、カルシウムイオノフォアでは、ICSIICSI-AOAで先天異常、産科的予後、新生児予後(新生児の発達, 行動、言語発達)に関して有意な差はありません。

遺伝上の安全性などは未解決です。

 

 

 

 

 

https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12743881984.html