2022/05/11
妊娠前の高コレステロール血症
LDLコレステロールを低下させる薬物療法
Low Density Lipoprotein cholesterol 低比重リポタンパク質コレステロール
LDL、HDLコレステロールとは
・コレステロールは主に肝臓で作られ、LDL(低比重リポたんぱく)に包まれて全身へ運ばれます。LDLコレステロールが血液中で増えすぎると、動脈硬化の原因となり、「悪玉」コレステロールと呼ばれています。
・一方、HDL(高比重リポたんぱく)は、全身から酸化したLDLコレステロールを肝臓に回収し、「善玉」コレステロールと呼ばれています。
家族性高コレステロール血症とは
・余分な悪玉コレステロールは、肝臓の細胞の表面にあるLDL受容体から細胞内に取り込まれて壊されます。
・家族性高コレステロール血症の方では、この受容体がうまく働かないために悪玉コレステロールが細胞内に取り込まれず、生まれつきこれが異常に増えてしまいます。
・遺伝子は父親と母親から受け継ぎますが、どちらか片親の遺伝子の引継ぎをヘテロ接合体、両親の遺伝子の引継ぎをホモ接合体といいます。家族性高コレステロール血症のホモ接合体では、コレステロール値が非常に高くなります。
・診断基準は
1)LDLコレステロール≧180mg/dl
2)黄色腫がある(まぶた、膝、肘、手の甲などの黄色の膨らみ)
3)2親等以内の血族に、家族性高コレステロール血症か、若年性(男性55歳未満、女性65歳未満)の心筋梗塞や狭心症の人がいる
のうち、2項目が当てはまる。
・動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞になることがあります。
・家族性高コレステロール血症では心筋梗塞は、男性で20歳代、女性で30歳代に始まり、発症のピークは男性で40歳代、女性で50歳代です。
治療目標
・生活習慣の改善
・禁煙
・食事療法
・薬物療法
などにより、
・LDLコレステロール<100mg/dl
に低下させる。
妊娠中に使用できる薬剤は 「胆汁酸吸着レジン」
胆汁酸吸着レジンは、十二指腸でLDLコレステロールを吸着して便として排出させます。
このためにコレステロール値の低下が期待できるとともに、薬が体内に吸収されないので妊娠中に使用することができます。
「胆汁酸吸着レジン」以外の薬剤は胎児奇形などの発症リスク
・薬物治療中に妊娠が判明した場合にはただちに中止するべき
・薬物治療中で妊娠の可能性のある場合には、3か月間の薬物投与を中止してから妊娠を試みるべき
・授乳期には服用を中止する
・いずれにおいても、胆汁酸吸着レジンは内服ができるので、変更も検討する。
高コレステロール血症薬の一例です。妊婦はすべて使用禁忌です。
プラバスタチン 禁忌
ピタバスタチン 禁忌
アトルバスタチン 禁忌
シンバスタチン 禁忌
フルバスタチン 禁忌
ロスバスタチン 禁忌
クロフィブラート 禁忌
ベザフィブラート 禁忌
クリノフィブラート 禁忌
フェノフィブラート 禁忌
プロブコール 禁忌
各薬剤の添付文書には、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。」「授乳中の婦人には投与しないこと。」と記載されています。
妊娠前、妊娠中に使用できそうな薬剤
妊娠を心待ちにしている時や、妊娠中にも治療が必要な方がいます。
トコフェロールニコチン酸エステル:記載なし
コレスチラミン:有益性投与
エゼチミブ:有益性投与
イコサペント酸エチル:有益性投与
オメガ‐3脂肪酸エチル:有益性投与
妊娠前の準備
心エコー、頸動脈エコー、心電図、運動負荷心電図等により、動脈硬化症や心臓冠動脈疾患、大動脈弁などの狭窄症の合併などのスクリーニングと、必要に応じて適切な処置を行いましょう。
妊娠中、産後
・妊娠中にはLDLコレステロールと中性脂肪値はさらに上昇し、特に妊娠24週(7か月)以降はLDLコレステロールが約3割、中性脂肪がおよそ2倍の上昇が認められます。
・家族性高コレステロール血症の方は、血液凝固能や血小板機能が亢進して血液の粘調度が亢進することにより、子宮胎盤血流が低下すること、LDLアフェレシス治療により血流が改善することが知られています。
・妊娠後期、特に出産時に心血管系に大きなストレスがかかるため、妊娠中のLDLアフェレシスの施行が望ましいとされています。妊娠中もLDLアフェレシス治療は安全に行うことができます。
・授乳中も、定期的なLDLアフェレシス治療を継続してLDLコレステロール値を適切にコントロールすることが望ましいとされています。
「妊娠前の高コレステロール血症 LDLコレステロールを低下させる薬物療法」 | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)