2022/04/27
抗セントロメア抗体
卵子の減数分裂
卵母細胞は黄体化ホルモンの刺激を受けると、減数分裂を再開します。第一減数分裂が完了すると、第一極体が放出されます。
精子の侵入によって第二減数分裂が再開すると、第二極体が放出され、雌性前核と雄性前核を持つ前核期胚となります。
極体はいずれも退化します。
異常受精について
正常受精では前核は2個出現し、これを2PNと言います。
例えば、前核が1個多く3個に見える3PNという異常受精の仕組みの一つは次のようです。
1)精子が2個受精(異常)
2)卵子の染色体異常(はじめから2倍の染色体だった)
セントロメア;染色体の接着・維持・分離に関わります。
セントロメアは染色体同志を接着させ、この状態を維持します。
細胞分裂の際にはこのセントロメア領域に2本の紡錘糸が付着し、2つの染色体が分離してそれぞれの中心体に引かれていき、新しい2つの細胞が形成されます。
(仮説)抗セントロメア抗体があると、このセントロメアの働きに異常が起こり、例えば紡錘糸が付着しなかったり、一方の紡錘糸にだけ付着したりするようなことが起こります。
そうすると、新しい細胞形成に寄与できない染色体が存在したり、染色体数に異常を持つ細胞が出現するようになります。
正常な細胞分裂では、セントロメア領域に2本の紡錘糸が付着し、2つの染色体が分離してそれぞれの中心体に引かれていき、新しい2つの細胞が形成されます。
(以降は仮説です。)抗セントロメア抗体があるとこのセントロメアの働きに異常が起こり、例えば紡錘糸が付着しなかったり、一方の紡錘糸にだけ付着したりするようなことが起こります。
そうすると、新しい細胞の染色体数が少なかったり、分離しない染色体が混入したりします。
どちらの前核にも入れなかった染色体の集合が、もう一つの前核のように見えることもあります。
異常受精について(3PN)(正常受精は2PN)
3PN(1個多い!)の場合
1)精子が2個受精(異常)
2)卵子の染色体異常(はじめから2倍の染色体だった)
(仮説)こうして、セントロメア抗体陽性の場合には、雌性前核が2個以上による3PNなどの異常受精や、染色体不分離による染色体異常を持つ前核の出現になります。
抗セントロメア抗体陽性では、生殖補助医療の成績が悪いとされています。
・成熟卵(MⅡ期)が少ない
・未熟卵(MⅠ期)が多い
・4~8細胞への分割率が低い
・体外受精では、雄性・雌性の2つの前核をもつ2PN率が低い、3つ以上の前核をもつ多前核胚率が高い
・顕微授精では、GV・MⅠ率が高く、MⅡ率が低い、2PN率が低い、多前核胚率が高い、着床率が低い
抗セントロメア抗体陽性の治療例
プレドニンは異常受精に有効のため、多精子受精の検査として抗セントロメア抗体検査を行い、陽性の場合に卵胞発育期間中にプレドニン(15mg/日)を服用します。
抗セントロメア抗体と着床障害との関連は不明ですが、プレドニン10mg/日を着床期に7日間服用します。
妊婦への使用と、用量・用法
妊婦への使用
添付文書では、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物試験で催奇形作用が報告されており、また、新生児に副腎不全を起こすことがある。」とされています。
プレドニンの約90%は胎盤で分解されるため胎盤通過性は小さく、胎児に達する薬剤量は少しです。
催奇形性はないとされています。
用法・用量
添付文書では、「通常、成人にはプレドニゾロンとして1日5~60mgを1~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」とされています。
妊娠中は一般的に10〜15mg/日を用います。
https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12739678665.html