ターナー症候群の自然、または自身の卵を用いた生殖補助医療での妊娠・分娩

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ターナー症候群の自然、または自身の卵を用いた生殖補助医療での妊娠・分娩

 

 

日本産婦人科医会のホームページ (5)ターナー症候群の健康管理,妊娠出産 日本産婦人科医会 (jaog.or.jp) には、次のように記載されています。

 

『ターナー症候群の自然妊娠率はきわめて低い。本症の心血管系合併症による妊娠・出産時の死亡が報告され、帝王切開率は有意に高く在胎週数は有意に短く、妊娠高血圧症候群が多い傾向にあるとされている。妊娠・出産に際しては高血圧の治療とともに定期的に心エコーやMRI検査を行い、周産期専門医および循環器専門医を含む医療チームで管理することが推奨される。』

 

 

また、ウィキペディア ターナー症候群 – Wikipedia には、次のように記載されています。

 

『非モザイクの45,X女性でも妊娠の報告が28例あるが、通常に比べ流・死産や奇形などが多く、実年齢より生理的年齢が多いのが原因ではないかとされている。モザイク型の場合は46,XXとの場合は1/3程に月経も見られ比較的妊娠率も高い。』

 

 

国内での、Turner症候群の自然、または自身の卵での生殖補助医療での妊娠・分娩報告を探してみました。

 

 

妊娠・分娩1  自己卵子を用いた生殖補助医療により妊娠・出産に至ったTurner症候群の一例  日本受精着床学会雑誌 39(1):103-106,2022

 

Turner症候群は、性染色体異常を示す性分化疾患のひとつです。早期の性腺機能低下により月経発来は1割程度で、妊娠まで至る例はまれです。妊娠しても流産率が高く、合併する心血管障害による周産期リスクも高くなります。

生殖補助医療(ART)での妊娠出産に至ったTurner症例の報告です。28歳未経妊。幼少期にTurner症候群と診断。核型は47,XXX[15]/45,X[13]/46,XX[2]で、大動脈弁狭窄症を合併。10歳時に初経、以後定期的に月経を認めていました。27歳で結婚しました。抗ミュラー管ホルモンは0.18ng/mlと低値でした。子宮卵管造影検査で、双角子宮を認めました。抗精子抗体陽性のためARTの適応となりました。低刺激法による複数回の採卵後に、良好胚盤胞を凍結。一度は流産に至り、絨毛染色体検査は正常核型でした。ホルモン補充周期で左子宮に移植し、妊娠成立。羊水染色体検査は正常核型でした。妊娠経過は順調で、大動脈弁狭窄症のために選択的帝王切開にて、37週で2,780gの児を分娩しました。卵巣機能は低下していましたが良好胚盤胞を得ることが可能でした。

Tumer症候群の不妊治療にあたっては、その特有な合併症による周産期リスクについて事前に十分に検討したうえで分娩可能と判断されれば、早目のstep upが望ましいと思われます。』

 

 

妊娠・分娩2 自然妊娠し正常な妊娠経過をたどったターナー症候群の1 一般社団法人関東連合産科婦人科学会 (jsog-k.jp)

 

『ターナー症候群は、2本のX染色体のうち1本の全欠失または短腕の欠失があり、かつY染色体を持たないもので、低身長、性腺機能不全、および翼状頚、外反肘などの外表奇形を3主徴とする女子の先天異常です。出生女児1000人に対し0.72.1と比較的頻度の高い染色体異常です。本症の多くは二次性徴を欠きますが、自然に二次性徴が発来するものも約20%に存在します。しかし、自然に妊娠する例は極めて少なく、妊娠しても流産や死産が多く、また出生した児には奇形や性染色体異常の発生が多いとされています。

26歳の未経妊未経産で、続発性無月経を主訴に前医を受診し、妊娠22週時に紹介受診しました。妊娠経過中に特記すべきことなく、順調に経過しました。低身長(148cm)のため妊娠35週時に骨盤X線計測を行い、児頭骨盤不均衡がないことを確認した後、妊娠39週に正常分娩となりました。3475gの男児で、正常核型でした。』

 

 

妊娠・分娩3 ターナー女性の妊娠出産
digidepo_10732536_po_ART0010486568.pdf (ndl.go.jp)

 

『ターナー症候群は自然に二次性徴をきたした症例では妊娠例が認められているが、大多数は卵巣機能不全により妊孕性はありません。

12歳初経。15歳時に低身長を主訴に小児科受診し、ターナー症候群モザイク型(46XX45×0)と診断。21歳、過多月経のため思春期外来受診。以後、月経異常、循環器・耳鼻科・骨量など成人ターナー女性の管理。33歳結婚し、34歳で自然妊娠。妊娠時1393cm365kg。妊娠35週、胎児発育不全と低身長による腹部圧迫感増強のため、管理入院。383日、自然陣発しましたが、胎児機能不全と児頭骨盤不均衡のため緊急帝王切開で男児1890g アプガースコア:59を出産。』

 

 

国内での非モザイク例ターナー症候群の妊娠・出産例は、インターネットで検索する限りではほとんど報告がないようでした。

次は海外の文献です。

 

 

ターナー症候群の女性480人における自然妊娠の可能性と妊娠の結果
Spontaneous fertility and pregnancy outcomes amongst 480 women with Turner syndrome (silverchair.com)

 

27名(5.6%)、合計52件の自然妊娠がありました。

自然妊娠の発生と相関する予測因子は、自然初潮とモザイク核型の2つでした。

妊娠までの期間の中央値は6ヶ月(範囲0-84)でした。

流産は16件の妊娠で発生し、一般フランス人集団の15%に対して30.8%でした(P < 0.01)。

残りの妊娠の結果は、合法的な中絶(n = 2)、医学的中断(n = 3)、子宮内胎児死亡(n = 1)、および正期産(n = 30)でした。

帝王切開の割合は一般集団よりも高く、それぞれ46.7%21%でした(P < 0.001)。

妊娠による高血圧性障害(PHD)は4例(13.3%)、うち軽度の子癇前症は2例(6.7%)でした。

大動脈基部拡張や大動脈解離は観察されませんでした。

出生時体重の中央値は3030g(範囲2020-3460)でした。

このコホートから発行された17人の娘に2例のターナー症候群が確認されました。

 

 

 

https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12736421317.html