2022/03/28
多嚢胞性卵巣症候群と睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea syndrome : SAS)
日本呼吸器学会 disease_i05.pdf (jrs.or.jp)
概要
睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気です。
疫学
成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性では40歳~50歳代が半数以上を占め、女性では閉経後に増加します。
発症のメカニズム
空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。首まわりの脂肪の沈着が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満はSASと深く関係しています。扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となります。あごが後退していたり、あごが小さいこともSASの原因となり、肥満でなくてもSASになります。
症状
いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などを認めます。日中の眠気は、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害の原因にもなります。
診断
問診などでSASが疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて睡眠中の呼吸状態の評価を行います。PSGにて、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際にSASと診断します。その重症度はAHI 5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。
治療
AHIが20以上で日中の眠気などを認めるSASでは、経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure:CPAP)が標準的治療とされています。CPAPはマスクを介して持続的に空 気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。また、下あごを前方に移動させる口腔内装置(マウスピース)を使用して治療することもあります。
生活上の注意
肥満者では減量することで無呼吸の程度が軽減することが多く、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが重要です。アルコールは睡眠の質を悪化させるので、晩酌は控える必要があります。
予後
成人SASでは高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、特に、AHI30以上の重症例では心血管系疾患発症の危 険性が約5倍にもなります。しかし、CPAP治療にて、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。
論文紹介
多嚢胞性卵巣症候群における閉塞性睡眠時無呼吸症候群と代謝機能障害について
多嚢胞性卵巣症候群における閉塞性睡眠時無呼吸および代謝機能不全 – Bibgraph(ビブグラフ)| PubMedを日本語で論文検索 (hpcr.jp)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)における代謝異常の病因として、十分に認識されていないものの、重要な因子であることが知られています。
最近の知見では、PCOSには2つのサブタイプが存在することが示唆されています。
PCOSにはOSAを伴うものと伴わないものがあり、この2つのサブタイプは異なる代謝および内分泌の変化と関連している可能性があることを最近の知見は示唆しています。
OSAを持つPCOS女性は、OSAを持たないPCOS女性よりも糖尿病および心血管疾患のリスクがはるかに高く、OSAの重症度を下げることを目標とした治療介入が有益である可能性があります。
多嚢胞性卵巣症候群を有する肥満女性における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率の増加について
Increased Prevalence of Obstructive Sleep Apnea Syndrome in Obese Women with Polycystic Ovary Syndrome1 | The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism | Oxford Academic (oup.com)
OSAは、女性よりも男性にかなり多くみられます。
予備的なデータでは、アンドロゲンが無呼吸症候群の男性優位に関与している可能性が示唆されています。
PCOSは、月経障害、アンドロゲン過剰、そしてしばしば肥満によって特徴付けられます。
これらの特徴は、PCOSを持つ女性がOSAのリスクを高める可能性があることを示唆しています。
PCOSを有する肥満女性が、年齢と体重をマッチさせた生殖機能的に正常女性と比較して、睡眠時無呼吸症候群の有病率が高いかどうかを調べるために、PCOSを有する18人の肥満女性と年齢と体重をマッチさせた対照女性において、無呼吸–低呼吸指数(AHI)を決定するための夜間睡眠ポリグラフ検査を実施しました。
さらに、ウエスト、ヒップ、ネック周囲径、血清総テストステロン、非結合型テストステロン、DHEASを測定しました。
PCOS女性は対照女性よりもAHIが高値でした(22.5 +/- 6.0, vs. 6.7 +/- 1.0, P = 0.008)。
PCOS女性はまた、症候性OSA症候群に罹患している可能性が高値でした(44.4% vs. 5.5%、P = 0.008)。
AHIは、PCOSの女性において、ウエスト・ヒップ比(r = 0.51, P < 0.03)、血清テストステロン(r = 0.52, P < 0.03) および非結合テストステロン(r = 0.50, P < 0.05)と相関がありました。
我々は、PCOSを有する肥満女性は、マッチした生殖機能的に正常な女性と比較した場合、OSAのリスクが高いことを結論づけました。
PCOSの女性は、睡眠時無呼吸症候群の症状に関して慎重に質問されるべきです。
多嚢胞性卵巣症候群と睡眠時無呼吸症候群を有する女性のメタボリック研究
Clinical Trial on Polycystic Ovary Syndrome: Depot Lupron followed by estrogen plus placebo, Depot Lupron followed by progesterone plus placebo., CPAP – Clinical Trials Registry – ICH GCP
アメリカ人の肥満と慢性的な睡眠不足の割合は記録的なレベルにあり、この2つの症状の因果関係を裏付ける証拠が続々と登場しています。
睡眠障害に関連する代謝異常は、特にOSA患者において顕著であり、従来は男性に関連する疾患でした。
OSAは男性に多くみられますが、その臨床的特徴や睡眠ポリグラフの特徴が男性と異なるため、女性では十分に認識されていません。
特にPCOSの女性はOSAになりやすく、PCOSでない肥満女性と比較して、発症リスクが少なくとも5倍高いと言われています。
https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12734265874.html