2022/03/09
妊婦・授乳婦の う歯・歯周病
妊婦・授乳婦の方は、歯科医師から適切な口腔ケアを勧めてもらいましょう。
参考
gl_sanka_2020.pdf (jsog.or.jp)
妊娠中の口腔環境変化
妊娠中はホルモンバランスが変化したり、唾液の分泌が低下したり、つわりで歯磨きが困難になることなどから、口腔環境が変化します。
女性ホルモンが増加すると、プレボテラ インターメディア Prevotella intermedia という細菌が増加して、妊娠関連性歯肉炎や歯周炎の発症や悪化が生じます。
これらのために、口腔衛生管理が不良になると歯周病が悪化し、う歯も進行しやすくなります。
妊婦の32%に歯周病が認められた、という調査もあります。
歯周病 と う歯
歯周病は歯周病原細菌によって惹き起こされる歯周組織の感染性炎症性疾患で、食習慣、歯磨き習慣、喫煙、糖尿病などの全身性疾患との関連が示唆されています。
歯周病合併妊娠では、早産、胎児発育不全、低体重児出産、妊娠高血圧腎症の危険性が高いとされています。
う歯は口腔内細菌が糖質から作る酸によって歯の実質が欠損した状態の歯をいい、歯周病とともに歯科の二大疾患とされています。
う歯については早産の危険因子とはいえないという報告もあります。
歯周病は早産・低体重児出産を増加させるのでしょうか?
歯周病と早産、低体重児出産との有意な相関が多く報告され、歯周病は中等度の早産・低体重児出産の危険因子であると結論づけられています。
歯周病と妊娠高血圧症候群や切迫早産との相関も指摘されています。
歯周治療を早産・低体重児出産の予防を目的として行うべきでしょうか?
妊娠中期に行われる妊婦への歯周治療や麻酔は安全で、妊婦の歯周組織の健康回復のために有用です。
しかしながら、妊娠中期の歯周治療は早産および低体重児出産を抑制しないという明確なエビデンスの存在から、妊婦に対して早産・低体重児出産の予防を目的とした歯周治療は行わないように勧められています。
歯周病が早産・低体重児出産の進行に関与するというエビデンスはありますが、歯周病を治療してもが早産・低体重児出産が減らないという矛盾があります。
歯周病原細菌の影響
歯周病によってポケットに微小潰瘍が形成され、細菌が血液中に侵入して菌血症を起こすことにより、出産に影響すると考えられています。
歯周病原細菌が子宮や羊水、胎盤、臍帯などに感染が起こると、早産や低体重児出産のリスクとなります。
妊娠中は、良好な口腔内環境を保って歯周病やう歯に罹患しないように適切な口腔ケアをしましょう。
母子手帳にある「妊娠中と産後の歯の状態」などを活用しましょう。
各市町村において妊婦歯科検診が実施されています。
早期発見による早期治療と、疾患に罹患しないための予防処置が重要です。
赤ちゃんに虫歯がうつります
新生児の口腔内は生まれた直後は無菌ですが、母体の口腔内細菌が伝播します。
母親の適切な口腔ケアは、児の う歯 の原因となる口腔内細菌伝播を減少させる可能性があります。
授乳中も良好な口腔内環境を保ちましょう。
口腔ケア
日常のセルフケア
歯磨き
禁煙
専門ケア
妊婦に対する定期的な歯周予防処置には、歯科医師、歯科衛生士による歯周組織検査と口腔衛生指導、機械的歯面清掃、歯垢・歯石除去、咬合調整、保健指導などがあります。
妊娠中・授乳中の歯科治療
妊娠中や授乳中の歯科治療は安全ですので、妊娠・授乳を理由に歯科治療を保留したり制限したりする必要はありません。
治療の遅れは、多くの問題を起こす可能性があります。
妊娠中の歯周病治療の効果については、早産や低出生体重児を減少させたとする報告もありますが、否定的な報告もあり、結論は出ていません。
妊婦の歯周治療
妊娠初期はブラッシングを中心に、極力短時間でストレスのない最小限の治療を行い、妊娠の安定期(妊娠4~5カ月)まで待って、歯石除去などを行います。
妊娠中の内服は極力避け、セルフケアに加えて機械的歯面清掃などのプロフェッショナルケアを併用することが望ましいです。
歯周病により妊娠中の抜歯が必要となった場合には、歯周ポケット内の歯垢除去を徹底し、安定期を待って抜歯しますが、極力産後に行います。
妊娠準備中も
妊娠を予定している人に対しても、積極的な予防処置を行うことが望ましいとされています。
「妊婦・授乳婦の う歯・歯周病」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)