卵胞刺激ホルモンについて

今日のお勉強は、「卵胞刺激ホルモンについて」です。

 

 原始卵胞は加齢とともに緩徐に減少しますが、40歳代に入ると減少は急激に進行し4041歳の2年間に残りの70%が消失し、さらに45歳までに90%が消失するとされます。そして、残存卵胞数が1,000個以下になると閉経に至ります。

 卵胞刺激ホルモン基礎値(月経3日目頃)の上昇は、卵巣予備能が真に低下してきた場合に起こり、その上昇は閉経の約2年前から始まるとされます。測定の際には、卵胞ホルモン製剤を使用している場合は中止1か月以後とします。機能性卵巣嚢胞の存在により卵胞ホルモン高値が認められる場合や多嚢胞性卵巣症候群では、卵胞刺激ホルモン値は抑制されている場合がありますので注意が必要です。

 卵胞刺激ホルモンの正常な基礎値は10mIU/mL以下で、それ以上は卵巣予備能が低下しています。特に13mIU/mL以上では、採卵ができなかったり、妊娠率が低下します。40歳未満で無月経を呈し、卵胞刺激ホルモンが40mIU/mL以上となる早発卵巣不全の患者が自然妊娠する率は510%とされます。

 早発卵巣不全と診断された場合でも卵巣機能の一時的な回復がみられることがあり、卵胞刺激ホルモン値が13mIU/mL以下に低下し、卵胞発育や排卵、妊娠が卵胞ホルモンを使用しない周期においても観察されます。また、卵胞刺激ホルモンは卵巣予備能低下の過程において比較的遅く上昇してくるので、卵胞刺激ホルモン基礎値が正常値であっても卵巣機能が低下していたり、正常な月経周期を有していても卵胞刺激ホルモン基礎値が上昇していることはあります。

 卵巣機能の低下のために卵胞刺激ホルモン基礎値の高値を認める、すなわち卵胞刺激ホルモン高値がずっと継続している場合には、卵胞は性腺刺激ホルモンに対し反応性が減弱し卵巣刺激への反応の低下が予想されます。卵胞ホルモンを内服・注射・貼付などで使用することにより卵胞刺激ホルモンを低下させてから卵巣刺激を開始することで、性腺刺激ホルモンに対する反応性の回復が期待できます。卵胞刺激ホルモン基礎値が高値である場合、卵胞刺激ホルモン値がおおむね10mIU/mL以下になるように卵胞ホルモンの周期的な使用もしくは連続使用を行ったのちに、排卵誘発を調節卵巣刺激で行うと卵胞発育を認めることがあります。ただし、早発卵巣不全患者に対する卵胞ホルモン補充後の性腺刺激ホルモン療法による排卵誘発には多量の性腺刺激ホルモンを必要とし、無効なことも多く、卵胞刺激ホルモン基礎値の上昇がみられた場合の不妊治療は、きわめて低い妊娠率しか期待できません。

 

 卵巣機能検査は卵胞刺激ホルモンの他に、抗ミュラー管ホルモン、超音波検査などで行います。

 また、体外受精での卵の観察や精子との受精状態、受精卵の発育経過などでも卵巣の働きや卵の質を知ることができます。体外受精は治療だけでなく、非常に重要な検査にもなります。