2020/04/09
『排卵後の卵胞からの卵子の回収』 千葉大学様の論文より
千葉大学は、従来の体外受精では利用されてこなかった「排卵済み」とされる卵胞から高い確率で卵を回収できることを見出し、このような卵を使った体外受精に成功したことを発表しました。
卵巣にある卵胞の嚢には卵胞液が溜まっており、卵が十分に育つと卵胞が破裂して、卵胞液とともに卵は卵胞外に排出されます。排卵された卵は卵管を通って子宮に移動し、子宮内で育ちます。
体外受精では、卵が成熟した頃に成熟卵胞を針で刺し、吸引して卵を採卵、その後、胚移植します。これまで、卵胞が一旦破裂すると卵胞から卵が押し出され、卵は採れないと考えられてきました。そのため、破裂済み卵胞では治療を諦めざるを得ませんでした。
今回、破裂済み卵胞の全てが卵を押し出しているわけではないことを突き止め、破裂済み卵胞を穿刺・吸引することで、高い確率で卵を回収できることを示しました。実際に、587名の不妊症患者の破裂済み卵胞を穿刺し、255名(43%)から卵を回収できたといいます。この255名に体外受精を実施したところ、28名(11%)に健康な新生児が生まれました。
また、40%以上もの卵が、破裂後も卵胞の中に留まっていることが判明し、これまで原因不明とされていた不妊の中には、卵胞が破裂しても卵が押し出されずに「無排卵」となっている事象が含まれている可能性が示唆されました。
「破裂済み卵胞から健康な卵子を採れるという発見は、これまでの体外受精に見直しを迫るものだ。成熟卵胞のみを使ったこれまでの体外受精では、今回のような新しい体外受精による成功は実現できなかった。今後の研究を進め、体外受精で利用できる卵子数が増えることで、体外受精による妊娠率がさらに高まることが期待できる」と、述べています。
〈津田沼IVFクリニック院長より〉
当クリニックでは、卵胞数の多寡に関わらず卵胞液の残存している卵胞は穿刺しています。経験上、成熟卵を採卵できることは多いと思います。
また、当クリニックではタイミング治療や人工授精後の排卵確認を原則していますが、排卵はしていても卵胞液の貯留している破裂卵胞をしばしば見かけます。このような卵胞の中に卵が残存しているものもあるのかも知れません。その場合は卵が卵管に行かれないので精子と出会えず、受精には至らないことになります。ただしこのようなことは繰り返される訳ではありませんので、一度位そのようなことがあっても心配することはありません。