2023/02/07
染色体構造異常に対する着床前遺伝学的検査(PGT-SR)
体外受精や顕微授精で得られた胚盤胞の栄養外胚葉細胞の一部を生検し、染色体構造変化を判定する検査です。
着床前染色体構造異常検査(PGT-SR) (coopersurgicalfertility-jp.com)
改変
「不育症へのPGT-SRの有用性は不明です」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)
PGT-SRについて
染色体構造異常とは、遺伝物質を含む染色体の構造異常により大きさや配列が正常な状態から変化した状態です。夫婦のどちらかが染色体構造異常の保因者では、染色体構造に問題が認められる胚が生成される確率が高く、妊娠に至ることが難しく、重篤な合併症をもつ子どもが生まれる可能性があります。
PGT-SRの対象者
PGT-SRは夫婦のどちらかが染色体構造異常の保因者であるために、染色体の部分的な過剰や欠失、構造に何らかの変化がみられる胚が作られる確率の高い患者を対象としています。染色体構造異常の子を妊娠したことがある場合や、自身やパートナーが以下の保因者である場合にはPGT-SRの対象となります。
- 逆位
- 相互転座
- ロバートソン転座
検査の原理
染色体構造異常は遺伝性であることもあれば、自然に生じることもあります。均衡型相互転座の保因者の多くは健康体ですが、子どもを持とうとする時点まで保因の有無を認識していないこともあります。
均衡型相互転座の保因者では、染色体構造に問題がある胚が生じる確率が高く、多くの場合では妊娠に至りません。
均衡型相互転座
均衡型相互転座は、2つの染色体から遺伝物質の断片が脱落し、相互に入れ替わることで起こります。
均衡型相互転座の保因者からは、同じ均衡型相互転座を持つ胚や不均衡型転座を持つ胚 (染色体数量の過不足がある)が生成されることもあれば、完全に正常な染色体を持つ胚が生成されることもあります。
両親のいずれかが均衡型相互転座の保因者の場合、その両親から生じた胚の約80%に染色体の異常が認められます。
ロバートソン転座
ロバートソン転座は2つの染色体が結合して、1つの大きな染色体が生成され、染色体数が46ではなく45になることで起こります。この結合の多くは、13番/14番および14番/21番の染色体の間で生じ、通常、転座型ダウン症候群、13トリソミー、片親性ダイソミー(UPD)などの疾患の発生に至ります。
逆位
逆位とは、1つの染色体のみに生じる染色体構造異常です。逆位では、染色体の一部が切断されて反転し、逆向きに再結合します。逆位の保因者では、染色体の欠失や重複を持つ胚が生じる可能性があります。
着床前遺伝子診断と自然妊娠:転座に伴う不育症における出産率の比較
・PGT-SRを受けた患者と自然妊娠した患者の累積出産率は67.6%と65.4%でした。
・PGT-SR群では、出産までのさらなる流産の平均回数は0.24回で、自然妊娠群の0.58回よりも有意に低値でした。 PGT-SRは流産率を大幅に低下させました。
・遺伝カウンセリングから出産までの平均月数において、2つの群に差はなかった(12.4対11.4)。
・患者1人当たりのPGT-SRの平均費用は約103万円(2023年2月、130円相当額で7,956米ドル)でした。
PGT-SRはさらなる流産を有意に防ぎましたが、出産率に差はありませんでした。
コメント
現時点では、不育症患者へのPGT-SRの有用性に関しては明らかになっていません。