2023/01/25
女性の抗精子抗体
「女性の抗精子抗体」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)
抗精子抗体(ASA)とは
女性にとって精子は「非自己」ですので、性交渉により「ASA」が同種抗体として産生され、免疫性不妊の原因となることがあります。
不妊症の機序として、腟や子宮頸管内、子宮腔、卵管内で分泌される抗体が精子に結合し、精子運動障害による女性生殖器内移動障害、卵との受精障害などが考えられます。
不妊症女性では2~3%に見られます。
ASAのひとつである「精子不動化抗体」が陽性の場合は、その抗体価を定量し、その値による治療方針は下のようです。(抗体価は変動します)
1.10以上⇒タイミングや人工授精では
妊娠が困難のため、体外受精
2.10前後⇒人工授精⇒体外受精
3.10未満⇒人工授精( ⇒体外受精)
抗精子抗体:起源、制御、およびヒト不妊症における精子反応性
Antisperm antibodies: origin, regulation, and sperm reactivity in human infertility (sciencedirectassets.com)
1.受精前の効果
・精子が子宮頸管を通過するのを阻害します。
精子は運動しますが、主にIgA ASAによって前進が阻害されます。
主にIgG ASAによる精子死滅と補体活性化
・精子の受精能形成–アクロソーム反応を阻害します。
・精子の透明帯への付着、結合、侵入を阻害します。
・精子と卵膜の融合を阻害します。
・精子の活性化または前核形成を阻害します。
2.受精後の効果
・精子に対する作用で、受精卵の分割、着床前後の悪影響が現れます。
・発育中の胚に対する直接的な活性で、生存率や妊娠率を低下させます。
コメント
ASAは精子の移動障害だけでなく、受精障害にも関連します。ASA陽性女性の卵胞液中にも精子不動化抗体が存在していますので、体外受精・胚移植の治療で良好な受精率や妊娠率を得るためには、使用する培養液に患者の血清を加えないこと、卵を十分に洗浄してできるだけ抗体を減らすことなどの注意が必要です。