2022/12/15
胚移植に最も適したタイミングとは?
「着床の窓」 を知るために
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「子宮内膜胚受容期検査」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)
胚移植成功のカギを握るタイミング
ー着床の窓ー
子宮内膜胚受容期検査は、体外受精周期の中において胚移植に最も適した時期を特定する遺伝子検査です。
胚が子宮に着床する可能性は、「着床の窓(WOI:Window Of Implantation)」と呼ばれるごく短い時期に高くなります。WOI のタイミングは、ほとんどの女性で予想できますが、反復着床不全の女性の30%ではWOIにずれが認められることが分かっています(わずかに早いか遅い)。これが良好な胚が着床しない原因である場合があります。
ご自分の着床の窓を知り、精度の高いタイミングで胚を移植することで、体外受精での妊娠の成立の可能性が高まります。
着床不全の10人に3人は、WOI がずれています
子宮内膜胚受容期検査は胚移植の時期を特定することにより、WOI にずれがある女性の妊娠率が上昇します。
子宮内膜胚受容期検査により、反復着床不全で WOI がずれている女性は、46%の妊娠率を示しました。
子宮内膜とは?
月経周期を知る
子宮内膜は子宮の内側を覆う組織です。月経周期中、子宮内膜は妊娠の可能性に備えて肥厚します。
妊娠が起きなかった場合は、子宮内膜が剥がれ、次の月経周期が始まります。
胚は肥厚した子宮内膜に着床し、発育に必要な酸素と栄養を受け取ります。
子宮内膜の状態が着床に適していない場合は、良好な胚であっても着床できない可能性があります。
子宮内膜胚受容期検査は、WOIのタイミングを知ることができます。
子宮内膜胚受容期検査とは?
子宮内膜は、WOIと呼ばれる期間に最も胚の受容性が高くなります。
体外受精を行う場合、着床の可能性があるのは黄体ホルモンを開始してから5日後です。これをP+5と呼び、この日に胚移植をします。
しかし、女性によっては WOI が P+4 や P+6 のように早くなったり遅くなったりすることがあります。
子宮内膜胚受容期検査は、子宮内膜が受容可能な時期かを判断する検査です。
子宮内膜胚受容期検査を推奨される女性
子宮内膜胚受容期検査は、体外受精で良好な胚を移植しても、着床しなかった経験を2回以上した女性に推奨されます。
津田沼IVFクリニックでは、不成功が1回でも、これからはじめての移植をする方でも、検査を行うことができます。
反復着床不全の女性の妊娠率は、子宮内膜胚受容期検査を受けた場合に向上することが実証されています。
子宮内膜胚受容期検査の臨床データ
反復着床不全の女性119名の内、69名は標準的な受容期のWOIを示し、胚移植を通常の日程で実施したところ妊娠率は41.5%でした。
50名は着床の窓が前後にずれていましたので、胚移植を子宮内膜胚受容期検査結果 に基づき実施したところ妊娠率は46.0%で、着床の窓がずれていない女性とほぼ同じでした。
子宮内膜胚受容期検査の4つのステップ
1.体外受精サイクル時に子宮内膜の生検(検体)を採取します。
2.検体を検査施設に送付して分析します。
3.遺伝子検査により子宮内膜の着床能を分析します。
4.結果に基づいて、次の周期での胚移植の予定を立てます。
子宮内膜胚受容期検査の結果
子宮内膜の受容期を特定します
受容期前
子宮内膜がまだ胚を受け入れる準備が出来ていない状態です。胚移植は子宮内膜の生検を採取した時期よりも後に実施することが推奨されます。
受容期
子宮内膜は受容可能な時期です。胚移植は子宮内膜の生検を採取した時期と同じ時期が推奨されます。
受容期後
子宮内膜は、受容能が最適な時期を過ぎています。胚移植は、子宮内膜の生検を採取した時期よりも早く実施することが推奨されます。
非受容期(着床の窓のずれ);子宮内膜は着床に適していない状態です。再検査を実施します。
受精卵の着床時期と流産
Time of Implantation of the Conceptus and Loss of Pregnancy | NEJM
6週間以上続いた妊娠のうち、絨毛性ゴナドトロピンが最初に現れたのは排卵の6〜12日後であり、84%の女性は8、9、10日目に着床しました。
早期流産の割合は、 9日目までの着床で13% 、10日目で26%、11日目で52%、11日目以降で82%と、着床が遅くなるほど高値でした。
反復着床不全に対する新規開発した子宮内膜胚受容期検査の臨床的妥当性
Clinical relevance of a newly developed endometrial receptivity test for patients with recurrent implantation failure in Japan (wiley.com)
個別化胚移植群の臨床妊娠率と生児出産率は非個別化胚移植群より有意に高値でした(37.7% vs. 20.0% 29.9% vs. 9.7%)。
新しいERPeak℠子宮内膜胚受容期検査は、年齢に関係なく、予後不良の患者にとって有用な代替診断ツールです。
子宮内膜因子不妊症の診断
現在のアプローチと研究の新しい道
Diagnosis of Endometrial-Factor Infertility: Current Approaches and New Avenues for Research – PMC (nih.gov)
子宮内膜は、母体が胚盤胞の接着と着床を許可する着床の窓(WOI)と呼ばれる個別に定義された期間に受容性があるとみなされます。
2011年に開発された子宮内膜受容性分析(ERA)を用いることで、この個人の受容性の状態を客観的に診断することができるようになりました。
ERAと計算より、238の異なる発現遺伝子を解析することで、子宮内膜受容性に固有のWOIを確実に予測することができます。
この個別化診断法は、子宮内膜受容性の生理的個人差と、着床不全(RIF)の原因とされる未知の子宮内膜病変を識別するのに有用です。
着床不全を繰り返す患者の治療法としての子宮内膜受容期分析による診断と個別胚移植の実現
The endometrial receptivity array for diagnosis and personalized embryo transfer as a treatment for patients with repeated implantation failure (fertstert.org)
ERAテストでは、反復着床不全で74.1%、対照被験者では88%という受容期の結果が得られました。
反復着床不全では、個別化胚移植が実施され、51.7%の妊娠率、33.9%の着床率という結果となりました。
生検後6ヶ月間の着床率と妊娠率は、妊娠が局所損傷と関係ないことを示しました。
反復着床不全患者22名(25.9%)は非受容期であり、そのうち15名は2回目のERAで着床の窓(WOI)の移動を確認しました。そのうち8例では、ERAで指定された日に個別化胚移植が実施され、妊娠率50.0%、着床率38.5%となりました。
反復着床不全患者ではWOIの移動の割合が多く、治療戦略としての個別化胚移植の考え方が導かれます。
WOIが移動した非受容期患者を個別化胚移植で救済した場合、妊娠率と着床率は同程度です。
正常胚移植不成功例における子宮内膜受容期分析(ERA)の役割
The role of the endometrial receptivity array (ERA) in patients who have failed euploid embryo transfers – PMC (nih.gov)
少なくとも1回の凍結融解胚移植が不成功だった患者のうち、22.5%はERAによってWOIが移動していると診断され、個別化胚移植の適応となりました。
個別化胚移植後、着床率と妊娠継続率は、統計的に有意な差はないものの、個別化胚移植を行わない患者に比べ高いことがわかりました(それぞれ73.7 対 54.2% と 63.2 対 41.7%)。
正常胚の着床不全の既往を持つ患者のかなりの割合が、ERAによって検出されるようにWOIがずれていることが実証されました。
これらの患者に対して、修正黄体ホルモン法を用いた個別化胚移植は、その後の正常胚の凍結融解胚移植の結果を改善する可能性があります。
黄体ホルモンの標準法と個別化胚移植の後に正常胚移植を受けた反復着床不全患者の生殖成績
子宮内膜胚受容期検査を実施した群の方が着床率(43% 対 68%)、妊娠継続率(32% 対 58%)、出生率(31% 対 41%)ともに高くなりました。
まとめ
「着床の窓」にずれが無いことはとても重要です。ずれがある場合は、調整して胚移植をするとずれの無い場合と同様の妊娠率になります。
子宮内膜胚受容能検査により、少ない回数の胚移植で妊娠する可能性があります。
卵巣機能低下など胚数が限られる場合は、初回胚移植時から子宮内膜胚受容能検査を施行しても良いかも知れません。