子宮内膜微生物叢

子宮内膜微生物叢

 

「子宮内膜微生物叢」  津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)

 

慢性子宮内膜炎

形質細胞 CD138

 

 

慢性子宮内膜炎とは

 

原因

細菌など(大腸菌や腸球菌、クレブシエラ、ガードネレラ、連鎖球菌、ブドウ球菌、クラミジア、淋菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマ属など)の感染による子宮内膜の慢性的な炎症です。感染経路は明らかとなっていません。通常は、無症状です。

これらの細菌等の感染や、子宮内の乳酸菌の割合が低くなると、不妊症や反復着床不全、反復流産を招くことになります。慢性子宮内膜炎が、これらの約10%にみられるという報告があります。

 

影響

体外受精成績(妊娠率↑、生産率↑、流産率↓)が低くなります。

 

子宮内膜は、月経で剝がれ落ちる「機能層」と、剝がれ落ちない「基底層」とからなります。

慢性子宮内膜炎では、子宮内膜基底層まで感染が及んでいますので、月経時に感染部位が剝がれ落ちずに慢性化します。

形質細胞は、正常では認めません。細菌などの存在が疑われます。

 

検査と診断

 

子宮内膜生検による病理学的検査により、子宮内膜間質部に形質細胞(免疫組織検査におけるCD138陽性細胞)が検出されます。不妊症では、形質細胞の個数による診断基準はありません。

形質細胞;正常では認めません。侵入した細菌やウイルスを攻撃する「抗体」を作り出す役割を持っています。

CD:cluster of differentiation 「分化抗原群」  番号によって似ている細胞の違いを見分けることができます。

子宮鏡検査の内膜所見(3主徴:発赤、浮腫、微小ポリープ)

細菌培養

次世代シーケンサーによる菌の検出(子宮内フローラ検査)

 

治療

 

抗菌薬が有効です。

治療により着床障害が改善し、妊娠率が増加します。

大腸菌、クレブシエラ、淋菌など;シプロフロキサシンの内服

ブドウ球菌など;アモキシシリン+クラブラン酸の内服

マイコプラズマなど;ジョサマイシン、あるいはミノサイクリンの内服

 

 

子宮内膜微生物叢が着床の成否に影響を与えるというエビデンス
Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure (ajog.org)

 

子宮内膜微生物叢を「90%以上のラクトバチルス属」と、「90%未満のラクトバチルス属と10%以上のその他の細菌」に分類したところ、着床率は60.7% 対 23.1%、妊娠率は70.6% 対 33.3%、妊娠継続率は58.8% 対 13.3%、および生児獲得率は58.8% 対 6.7%と、 「90%未満のラクトバチルス属と10%以上のその他の細菌」で著しく低下していました。

 

 

不妊症患者における16SリボソームRNA遺伝子配列決定による子宮内膜微生物叢の解析
Analysis of endometrial microbiota by 16S ribosomal RNA gene sequencing among infertile patients: a single‐center pilot study (wiley.com)

 

子宮内膜 vs 腟内の乳酸菌優勢微生物相(90%以上の乳酸菌属)は、IVF患者では38%(30/79 vs 44.3%(44/79)、非IVF患者では73.9%(17/23 vs 73.9%(17/23)、健康なボランティアでは85.7%(6/7 vs 85.7%(6 / 7)でした。

健康なボランティアにおける子宮内膜乳酸菌の割合は、同じ月経周期内で非常に安定しており、次の月経周期でも安定していました。

主な分類群はGardnerellaStreptococcusAtopobiumBifidobacteriumSneathiaPrevotellaおよびStaphylococcusでした。

15名の患者が1回の融解胚移植により妊娠しました。妊婦の乳酸菌の割合の中央値は96.45%でした。

日本人不妊女性の子宮内膜には、かなりの割合で非乳酸菌優勢(NLD)微生物叢が存在することがわかりました。

子宮内膜の乳酸菌濃度を90%以上にすると、NLD不妊症患者の着床成績に有利となる可能性があります。

 

 

不妊症患者における子宮内膜細菌叢の組成と生殖予後の関連性
s40168-021-01184-w.pdf

 

Atopobium, Bifidobacterium, Chryseobacterium, Gardnerella, Haemophilus, Klebsiella, Neisseria, Staphylococcus, Streptococcusからなる異種生物的子宮内膜微生物叢プロファイルは不成功の結果と関連していました。

乳酸菌は、生児転帰の患者において一貫して豊富でした。

この結果は、胚移植前の子宮内膜微生物叢組成が生殖転帰を予測する有用な生物学的指標であり、診断と治療戦略をさらに改善する機会を提供するものであることを示しています。

 

 

移植後の凍結胚盤胞着床における腟内細菌叢の影響
deab126.055.pdf (silverchair.com)

 

腟上部の乳酸菌およびその他の乳酸産生微生物( LactobacillusBifidobacteriumStreptococcusEnterococcus )の優占は、移植された胚盤胞の着床と高い相関がありました。

着床率は、乳酸菌優勢群73.3%および非優勢群30%、乳酸生産微生物優勢群75%および非優勢群22.2%でした。

 

 

着床不全を繰り返す不妊女性における腟内および子宮内膜の微生物群集の解析
Analysis of vaginal and endometrial microbiota communities in infertile women with a history of repeated implantation failure (wiley.com)

 

子宮内膜の微生物叢は、腟の微生物叢よりも高い多様性を有していました。

微生物叢プロファイルでは、着床不全患者の腟および子宮内膜の検体は、対照群と比較して、それぞれ5属および14属の細菌が有意に高値でした。

着床不全患者の腟内乳酸菌率は 76.4 % で、対照群の 91.8 % と比較して有意に低値でしたが、子宮内膜乳酸菌率は着床不全患者56.2 % と対照群 58.8 % で有意差はありませんでした。

子宮内膜と腟の両方で特定の細菌を含む微生物叢の障害があり、着床不全と関連していました。

子宮内膜ではなく腟内の乳酸菌率は、着床不全の生物学的指標となる可能性がある。

 

 

不妊症や不育症が疑われる女性では、「まず」、慢性子宮内膜炎の検査と治療をしてみましょう。

検査は、子宮鏡と子宮内膜組織診が基本ですが、子宮内細菌培養検査や子宮内フローラ検査などもあります。

津田沼IVFクリニックでは、すべての検査と治療が可能です。