2022/11/17
進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia ossificans progressiva:FOP)
進行性骨化性線維異形成症(FOP)(指定難病272) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
進行性骨化性線維異形成症(FOP)(指定難病272) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
進行性骨化性線維異形成症(FOP)(指定難病272) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
進行性骨化性線維異形成症 概要 – 小児慢性特定疾病情報センター (shouman.jp)
「進行性骨化性線維異形成症 FOP」 津田沼IVFクリニック | tsudanuma-ivf-clinicのブログ (ameblo.jp)
進行性骨化性線維異形成症(FOP)とは
全身の骨や軟骨の病気です。
子供の頃から全身の骨格筋や筋膜、腱、靭帯などが徐々に硬くなって骨に変わり、このため手足の関節の動く範囲が狭くなったり、背中が変形する病気です。
生まれつき足の親指が短く曲がっていることが多いという特徴があり、これからFOPが疑われることもあります。
外国では人口200万人に対して1人の患者さんがいると言われ、日本の患者数は60~84名と推計されています。
FOPになりやすいという特別な体質などはないと考えられています。
原因は、ACVR1(別名ALK2)と呼ばれる遺伝子の一部が正常と異なることであることが分かっています。
常染色体優性遺伝することが分かっていますが、突然変異による患者さんが多く、家族の中で複数の患者さんがいることはまれです。
この病気の主な症状である異所性骨化(筋肉や筋膜、腱、靭帯などが硬くなって骨に変わること)は、乳児期から学童期にかけて初めて起きることが多く、まず皮膚の下が腫れたり硬くなったりして、時に熱を持ったり痛みを伴うことがあります(フレア・アップ)。
フレア・アップを繰り返しながら異所性骨化を生じ、手足の関節の動きが悪くなったり、背中が変形しますが、フレア・アップが起きても必ず異所性骨化につながるとは限りません。
フレア・アップは特にきっかけがなく起きることも多いですが、けがや手術などがきっかけとなってフレア・アップが起きることもあります。病気の進行をできるだけ避けるためには、異所性骨化につながるとされるフレア・アップを起こさないことが大切です。けがの具体的な予防法は患者さんの状態によって異なりますが、少なくとも人とぶつかるような激しい運動は控えるほうが良いでしょう。
異所性骨化は背中や首、肩、足の付け根から始まり、徐々に手足の先の方に向かって広がる傾向があります。手の指の動きまで悪くなることは少ない様です。
呼吸に関係する筋肉や口を動かす筋肉の動きも悪くなり、呼吸の障害が起きたり、口が開けにくくなったりすることがあります。
心臓を含む内臓の筋肉には異所性骨化を生じないとされています。
足の親指が短く曲がっている、手の親指が短い、手の小指が曲がっている、耳が聞こえにくい、髪の毛が薄くなるなどの症状を示すことがあることが知られています。
レントゲンで膝などに異所性骨化とは異なる骨の出っ張りがあることもあります。
完全に治す治療法は現在ありません。フレア・アップを生じた際に異所性骨化への進行を防ぐために、ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤、ビスフォスフォネートなど様々な既存の薬が試みられています。
徐々に異所性骨化が進行していきます。足の関節が硬くなることにより、歩きにくくなり、杖や車いすが必要になることがあります。また腕の関節が硬くなることにより、食事や洗顔など手を使った身の回りの動作がやりにくくなったりします。
機能予後は、加齢とともに徐々に悪化します。10歳台から着衣、身繕い、衛生、リーチ動作等での障害が生じ、20~39歳ではそれ以外の動作を含めて機能障害が進み、40歳以上ではほぼ全介助となりますが、症状の進行には個人差があります。
生命予後は、胸郭の可動性低下による呼吸障害と心臓への負荷、口を開きにくいことによる栄養の障害が寿命に関わるとされています。海外からは、平均予測寿命は56歳との報告がありますが、70歳代で生存している患者さんも確認されています。
フレア・アップを予防するためには、けがを避ける必要があります。特に転倒、転落はフレア・アップだけでなく、受身の姿勢を取れずに頭などをけがしてしまうこともあるので注意が必要です。
筋肉内注射は避けるべきですが、皮下注射や静脈注射には問題がないといわれています。従って皮下注射の予防接種は十分に注意すれば問題なく行うことができます。インフルエンザやインフルエンザ様のウイルス感染症は、フレア・アップの原因になりうるとされていますので、インフルエンザの予防接種は勧められています。
口が開きにくいために歯みがきがおろそかになり虫歯ができると治療がとても厄介です。適切な歯の管理の指導を受けて励行することも大事です。
他に、聴力の低下、腎結石などを合併することがあります。
進行性骨化性線維異形成症の1歳女児例
ja (jst.go.jp)
FOPは、打撲や手術、感染などを契機として皮下腫瘤を生じる(flare-up)。初発のflare-upは乳幼児期に生じることが多く、その後数か月から数年の経過で同部位に異所性骨化が起こる。FOPに伴う足部の病変として、先天性外反母趾や足趾の低形成、踵骨棘や二重踵骨骨化などの報告がある。先天性外反母趾は一般的には稀な疾患だが、FOP症例の90%以上でみられるため、診断の大きな手掛かりとなる。
FOPにおける骨化は不可逆性のため、胸郭硬直による呼吸器感染や、肺性心、開口障害による栄養障害などが死亡原因となり平均寿命は40歳代である。骨化を防ぐためには、flare-upの誘因となる外傷や筋肉注射を含む外科的処置を極力回避しなければならない。また、呼吸障害や栄養障害の進行を遅らせるためには、出来る限り早期に診断し、骨化を最小限とするための適切なケアを行うことが重要とされる。
2006年に責任遺伝子(BMP type Iの受容体をコードするACVR1遺伝子)が同定され、遺伝子検査による確定診断が可能となった。現在のところ有効な治療法は確立されていないが、iPS細胞を用いた研究が開始されており、病態の解明がすすむとともに骨化を抑制する様々な作用機序の治療薬の開発や遺伝子修復などが想定されてきている。
FOPと妊娠
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妊娠に先立ち、FOP患者には妊娠に伴うリスクについて教育することが必須です。疾患の急速な進行に伴う異所性骨化、胸郭容積と胸壁の伸展性の制限による肺の状態の悪化、自然流産、早産、帝王切開出産、静脈血栓塞栓症、創傷形成、胎児遺伝50%、母体と胎児の死亡について知らされなければなりません。
妊娠を望まない人には、適切な避妊法を処方する必要があります。筋肉内注射に伴う異所性骨化のリスクがあるため、デポプロベラは避けるべきです。
妊娠した時点で、FOP患者には妊娠のリスクについてカウンセリングを行い、中絶を申し出るべきです。患者が妊娠の継続を望む場合は、産科、周産期科、麻酔科、呼吸器科、耳鼻科、内分泌科、新生児科、看護、理学療法などの集学的治療が可能な三次医療施設に紹介することが不可欠です。重要なことは、FOPの専門家がケアすることです。
早産の原因には、自然早産、母体の状態悪化による医原性早産、および胎児仮死が含まれます。早産が予想される場合には、副腎皮質ホルモンの投与が不可欠です。筋肉注射に伴うFOP再燃の危険性があるため、デキサメタゾンは筋肉注射の代わりに経口投与する必要があります。
妊娠はFOPの症状を悪化させることがあります。その結果、疾患が進行し、新たに発症した骨化により可動域がさらに制限される可能性があります。また、妊娠によってFOPの症状が悪化し、速やかにコルチコステロイドで治療しなければならない患者もいます。また、腹腔内容積の増大と胸壁の伸展性低下による肺圧迫のため、拘束性肺機能障害がより顕著になる場合もあります。このようなシナリオでは、麻酔科医、呼吸器科医、FOP専門家が相談に応じることが不可欠です。
分娩の場合、骨盤の変形、股関節の拘縮や強直、脊椎固定などのため、経腟分娩は禁忌です。したがって、帝王切開による分娩が選択されますが、切開部位に異所性骨化が発生する可能性があります。手術に伴う疾患の再燃の危険性があるため、予防的にプレドニゾンを1日1~2mg/kgの用量で分娩時および産後3日間投与する必要があります。副腎皮質ステロイドは再燃に対する治療法として確立されているため、特に手術部位の異所性骨化のリスクが高い手術の際には予防的に使用されることが多いです。
褥瘡や神経障害を予防するために、パッドを追加して患者の体位を慎重に決める必要があります。
術中には、解剖学的な歪みによる困難な手術に備える必要があります。
術後は、静脈血栓塞栓症のリスクがあるため、低分子量ヘパリンによる抗凝固療法を行うべきです。
FOP患者は、腰椎、股関節、仙腸関節の固定のため、局所麻酔の候補にはなりません。硬膜外麻酔や脊椎麻酔を行う際の針の挿入も異所性骨形成を促進する可能性があり、避けるべきです。頸椎固定、顎関節強直症、胸郭不全症候群、胸壁拘束性疾患、口腔外傷に対する過敏症は、気道管理および麻酔を複雑にし、生命を脅かす危険性をもたらします。経鼻気管ファイバー法による覚醒挿管を伴う麻酔を行うべきです。重要なことは、挿管に失敗した場合に緊急気管切開を行えるように外科医が待機していることです。
患者が妊娠を継続することを選択した場合、ケアと最適な転帰の管理を可能にする集学的チームを形成できる三次医療施設に紹介されるべきです。
コメント
この足を見て、進行性骨化性線維異形成症を疑うことが、この子の未来をより良いものにします。