ヘパリン在宅自己注射療法の適応と指針

ヘパリン在宅自己注射療法の適応と指針
demanding_paper_07.pdf (jsognh.jp)
一部改変

 

公益社団法人 日本産科婦人科学会

公益社団法人 日本産婦人科医会

日本産婦人科・新生児血液学会

一般社団法人 日本血栓止血学会

 

 

Ⅰ.目的および意義

 

ヘパリンは毎日2回の注射が必要です。注射の対象となる妊婦や血栓性素因を持つ患者にとって、毎日(土日や年末年始なども含みます)朝夕2回の通院は大きな負担となっています。

ヘパリン在宅自己注射の目的は、通院の際に生じる身体的、時間的、経済的などの負担を軽減し、質の高い社会生活を送ることです。

 

 

Ⅱ.適応基準(以下の()〜(6)すべてを満たすこと)

(1)ヘパリンに対してのアレルギーがなく、ヘパリン起因性血小板減少症の既往がないこと。

(2)他の代替療法に優る効果が期待できるヘパリン治療の適応患者であること。

(3)在宅自己注射により通院の身体的、時間的、経済的負担、さらに精神的苦痛が軽減され、生活の質が高められること。

(4)以下の①〜③のいずれかを満足し、担当医師が治療対象と認めた患者

①血栓性素因(先天性アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、抗リン脂質抗体症候群など)を有する患者

②深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症既往のある患者

③巨大血管腫、川崎病や心臓人工弁置換術後などの患者

 

抗リン脂質抗体症候群の診断における抗リン脂質抗体陽性は国際基準に則るものとし、抗CLβ2GPI複合体抗体、抗CLIgG、抗CLIgM、ループスアンチコアグラント検査のうち、いずれか一つ以上が陽性で、12週間以上の間隔をあけても陽性である場合をいう。現在のところ抗PE抗体、抗PS抗体陽性者は抗リン脂質抗体陽性者には含めない。

 

抗リン脂質抗体症候群

1.1回以上の動脈もしくは静脈血栓症

2.妊娠合併症

a)妊娠10週以降で他に原因のない正常形態胎児の死亡、または、

b)重症妊娠高血圧症候群、子癇または胎盤機能不全による妊娠34週以前の形態学的異常のない胎児の1回以上の早産、または、

c)妊娠10週以前の3回以上続けての他に原因のない流産

 

(5)患者ならびに家族(特に未成年者の場合)が、目的、意義、遵守事項などを十分に理解し、希望していること。

(6)医師、医療スタッフとの間に安定した信頼関係が築かれていること。

 

 

Ⅲ.患者教育

 

教育プログラムを作成し、それに従った患者教育が行われるべきである。

(1)血液凝固、血栓症に関する基礎知識

(2)ヘパリンの薬理作用

(3)副作用と発現時の対応

(4)ヘパリンの管理と記録

(5)注射の方法と実技

(6)注射針などの医療廃棄物の処理

(7)緊急時の連絡など

 

 

Ⅳ.患者の遵守事項

(1)ヘパリンを規定の方法で管理する。

(2)決められた方法で注射する。注射し忘れた際、決して2回分を1度に注射しないこと。

(3)定期的に受診する。

(4)治療経過などの記録を提出し、評価と指導を受ける。

(5)異常を感じた場合、不明の点は担当医に連絡し指示を仰ぐ。

(6)注射針や注射器などの在宅医療廃棄物は、病院へ持参し担当医等の指示に基づき、適切に処理する。

 

 

Ⅴ.方法

(1)皮下注射用ヘパリンを1回につき5,000単位、12時間ごと(1万単位/日)にインスリン自己注射用注射器(29あるいは30ゲージ)を用い、皮下に自己注射する。

(2)注射部位は、腹部、大腿、上腕とする。

 

 

Ⅵ.認可(自己注射療法開始条件)

(1)適応基準を満たしている。

(2)規定の教育プログラムに従った教育目標を達成していること。

(3)遵守事項を守ることに同意していること。

 

 

Ⅶ.管理と記録

(1)ヘパリンは規定の方法で管理する。

(2)処方された薬剤の名称、処方量、注射日時、注射量(単位数)、 回数、注射部位、 副作用の有無、疑問点などを記録する。

(3)担当医師は、定期的に確認してカルテに記載し、必要な指導を行う。

(4)定期的にAPTT、血小板数、AST,ALTなどを測定し、ヘパリン投与量や投与継続の可否を決定する。特に、血小板数測定は投与開始2週間以内に複数回、以降は1~2ヵ月毎に検査を行う。

 

 

ヘパリンカルシウムが使用できない患者
medical_point.pdf (mochida.co.jp)

1.出血している方

2.出血する可能性のある方

3.肝臓に重篤な障害のある方

4.腎臓に重篤な障害のある方

5.中枢神経系の手術又は外傷後日の浅い方

6.過去に本剤に含まれる成分で過敏な反応を経験したことがある方

7.過去にヘパリン起因性血小板減少症を経験したことがある方

 

 

ヘパリンカルシウム投与にともなう重大な副作用および主な自覚症状
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重大な副作用                      主な自覚症状

ショック                   冷や汗、めまい、意識がうすれる、考えがまとまらない、血の気が引く、判断力の低下、息切れ

アナフィラキシー様症状         からだがだるい、ふらつき、意識の低下、考えがまとまらない、ほてり、眼と口唇のまわりのはれ、しゃがれ声、息苦しい、息切れ、動悸、じんましん、判断力の低下

出血

(脳出血、消化管出血、肺出血、硬膜外血腫など)  意識障害、頭痛、しゃべりにくい、吐き気、嘔吐、片側のまひ、手足のまひ、しびれ、半身不随、血を吐く、腹痛、血が混ざった便、黒色便、血の混ざった痰、血圧低下、手術部位からの出血、注射部位からの出血

血小板減少               鼻血、歯ぐきの出血、あおあざができる、皮下出血、出血が止まりにくい

ヘパリン起因性血小板減少症等に伴う血小板減少・血栓症

(脳梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓症など)      呼吸困難、意識障害、けいれん、片側のまひ、手足のまひ、しびれ、四肢のはれ・疼痛・皮膚の色調の変化、注射部位が赤くなってきた、押すと痛いしこりができてきた

 

 

 

 

https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12751645322.html