炎症性腸疾患を合併した不妊症

炎症性腸疾患を合併した不妊症

 

 

-妊娠を迎える炎症性腸疾患患者さんへ-
03.pdf (ibdjapan.org)

 

炎症性腸疾患とは、慢性再燃性の腸管の炎症性疾患で、潰瘍性大腸炎とクローン病が含まれます。

炎症性腸疾患が落ち着いた状態(寛解期)であれば、男女とも不妊率が上がることはありません。

病気が落ち着いていない状態(活動期)にあると、女性の患者さんは妊娠しづらくなる可能性が指摘されています。

一般的な炎症性腸疾患の治療薬によって、女性患者さんが不妊になることはありません。

潰瘍性大腸炎治療薬のサラゾスルファピリジン等は葉酸拮抗作用を有しますので、神経管閉鎖障害(二分脊椎、脳瘤、無脳症等)発生のリスクが上昇するとされますが、葉酸を一緒に服用することによってそのリスクを低減する可能性があるとされています。

 

潰瘍性大腸炎の女性患者さんが大腸全摘出術を受けた後に、不妊率が一般の3倍に上昇したという報告があります。

クローン病の術後も、妊娠率がやや低下する可能性も指摘されており、原因として手術による卵巣の癒着などが考えられています。

仮にそうなっても卵巣自体に障害があるわけではないので、人工授精などによって十分に妊娠が可能です。

男性患者さんが、サラゾスルファピリジン(サラゾピリン® )を内服している時期には、精子の数や運動能が低下して一過性の男性不妊の原因となりますが、他の製剤に切り替えれば23ヶ月でもとに戻ります。

メサラジン(ペンタサ® 、 アサコール® )は精子に影響を与えず、男性不妊の原因とはなりません。

一般に男性患者さんでは術後に不妊率が上がることはなく、手術が男性の性機能障害の原因となることはきわめて稀です。

 

 

炎症性腸疾患のある不妊患者は、一般不妊患者と同等の体外受精の臨床成績を示します
Infertile patients with inflammatory bowel disease have comparable in vitro fertilization clinical outcomes to the general infertile population: Gynecological Endocrinology: Vol 36, No 6 (tandfonline.com)

 

炎症性腸疾患(IBD)および不妊症と診断され、異数性着床前遺伝子検査(PGT-A)を伴う体外受精(IVF)を受けた女性の臨床転帰を評価すること。

PGT-Aによる体外受精とその後の倍数体単一胚移植(SET)を受けた炎症性腸疾患患者の臨床転帰を、マッチさせた対照群と比較する後ろ向きコホート研究。

IBDと診断された38名の患者が、114名の対照群と比較されました。

着床率(71.0% vs. 78.0% (p = .68))、臨床妊娠率(50.0% vs. 60.5% (p = .68))、 生児出産率(62.9% vs. 73.0% (p = .06)) 多胎妊娠率 (0% vs. 1.1% (p = .25)) と流産率 (10.5% vs. 5.7% (p = .54)) IBDとコントロール群で有意差はありませんでした。

 

IBDの診断は、着床率を有意に変更することはありませんでした[調整後OR = 0.6 (95% CI -1.2 to 0.8)]。

さらに、IBD患者における移植率は、潰瘍性大腸炎またはクローン病の診断を受けていることによっても変化しませんでした(or = 0.4 95% CI 0.1-1.9)

IBDと診断され 単一胚移植 を受けた患者は、一般的な不妊患者と同等の臨床結果を得ています。

IBDの診断が体外受精の治療成績を損なわないということは、患者や医師にとって安心できることです。

 

炎症性腸疾患のある不妊患者で、単一の胚盤胞移植を行った場合、一般の不妊患者と同程度の体外受精成功率を示しました。

 

 

 

 

https://ameblo.jp/tsudanuma-ivf-clinic/entry-12748863990.html